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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第10章
(体幹トレーニングを取り入れたからかな。ぐらつきが減ってきてる気がする……)
滑り終えたヴィヴィは、自分では85点ぐらいの出来栄えと冷静に評価しながら、振付師の宮田の前まで滑っていく。
しかし、そこで目にした宮田の顔は曇っていた。
「全然、違う――」
「…………え?」
彼の作った通りに滑り切ったプロを全面否定した宮田に、ヴィヴィはぽかんとした。
「3ヶ月もの間、一体何をやっていたの?」
思いもよらぬ、厳しい追及を受けたヴィヴィは、
「せ、先生の振付けて下さった通り、沢山滑り込んで、自分のものにしよう、と……」
そう、しどろもどろで口にするも。
「確かにね。綺麗に滑れているし、技術的には高度なものばかりで加点も付くだろう。でも――」
そこで言葉を区切った宮田は、残念そうにヴィヴィを見据えた。
「ただ、綺麗なだけ――それだけ」
てっきり褒めて貰える。そう思っていたのに。
「……………」
(私は、サブコーチに『演技にキレがない』って言われたから、メリハリをつけて動くように――)
心の中でそう弁解するが、その言葉も途切れてしまう。
それ程に宮田の言葉にヴィヴィは打ちのめされた。
何も言い返してこない生徒に、宮田がさらに口を開く。
「君は『ただ綺麗なだけ』なスケーターになりたいの?」
「違う――っ!!」
宮田の挑発的な発言に、ヴィヴィは食って掛かるように叫んでいた。
周りが一瞬静かになり少しざわついたが、そんなものは耳には入ってこなかった。
「わ、私は、技術は勿論、どんな音楽も、どんな物も表現できるようになりたいって思ってます!」
ジュニアまでは、高度なジャンプが決まれば世界大会でも優勝出来ていた。
けれどシニアの選手を観る度
「私も、あんなふうに情感豊かに魅せられるスケーターになりたい」
そう思うようになってきたのだ。
「じゃあ、この剣の舞がバレエ音楽だって知っている?」
「はい」
「では、ガイーヌを観たことは?」
「え……?」
「この曲はバレエ音楽ガイーヌの中の一曲だ。今回の振り付けもそれを意識して作っている。ちょっと、こっちおいで」
宮田はリンクを降りると、近くのベンチに座りiPadを取り出した。
渡されたイヤフォンをはめると、画面にバレエの映像が映し出される。