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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第57章
「かわいい~! ヴィヴィ!!」
何故かちびっ子達から好評を得た、そのエキシビを見終わったサラから、
「やっぱ『お子ちゃま』じゃん~」
と酷評が返ってきた。
「う~る~さ~い~っ」
ヴィヴィは半目で、そう唸り声をあげる。
(今シーズンずっと試合後のエキシビションで滑るのに、滑る気なくさないで~……)
「クリスがマイケルジャクソンに!」
画面にはクリスのエキシビヨン、マイケルジャクソンの『Smooth Criminal』、2CELLOS版が流れていた。
「かっこ可愛い~っ!」
「あ、クリス、『ポウ』って言ってる!」
「お~! 氷の上でムーンウォーク!」
皆がワイワイ楽しそうに見てくれているのを目にした双子は、
「なんだか……物凄く、恥ずかしいん、だけど……」
とクリスが呟けば、ヴィヴィも「うん」と同意した。
「二人とも、双子プログラム、可愛いかったよ」
背凭れに凭れていた匠海が、双子にそう声を掛けながら、長い脚を組む。
「そ、そう?」
ヴィヴィが恐る恐る匠海を振り返ると、匠海は微笑してクリスを見つめていた。
しかし、ヴィヴィへと移されたその灰色の瞳は、微笑んでいるのにもかかわらず、何故か一瞬、途轍もなく昏く澱んで見えた。
(……お兄ちゃん……?)
「16歳の、健全な男子が……『可愛い』って、言われても……」
とクリスの呟きが耳に入り、ヴィヴィはふっとそちらを振り返った。
そのヴィヴィの背中に、背もたれに置かれていた匠海の右腕が静かに伸ばされ、そっと添えられる。
「………………っ」
ヴィヴィの華奢な躰が、ピクリと震える。
咄嗟に思ったのは、誰かに見られないかということだった。
ヴィヴィはさっと視線だけで目の前の親族達を見回したが、皆がテレビ画面に注目していて、誰も兄妹に視線をやっていなかった。
万が一こちらを振り返られても、ヴィヴィの躰とソファーの背凭れが死角となって、決して周りからは見えないだろう。
匠海の掌は、ヴィヴィの薄いワンピースの生地越しに、その躰の輪郭を確かめるようにゆっくりと降ろされていく。
物凄くゆっくりとした速度のそれは、掌の大きさと温かさを、まるで直に肌を触られている様に伝えてくる。