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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第57章
(お兄、ちゃん……?)
全神経が添えられた匠海の掌に、注がれているようだった。
「可愛いんだから、しょうがない」
匠海は口ではそう言ってクリスをからかっているのに、掌は執拗なほどヴィヴィの華奢な背を辿っていた。
まるで背骨の一つ一つを指の腹で確かめられているようにも感じられて、ぞくぞくする。
やがて腰まで下りてきたそれは、そこで手を止めた。
その掌はピクリとも動かず添えられているだけなのに、まるでその掌で全身をまさぐられているかの様に、ヴィヴィの躰が疼きだす。
(お兄ちゃんの大きな掌が、このままヴィヴィの腰に回されて……ヴィヴィの恥ずかしいところに、あの長い指が触れてくれたら……)
ヴィヴィの鼓動が、どくどくと早鐘を打ち始める。
視界の中に、優雅に組まれた匠海の足が入る。
(ヴィヴィ……、あの上に跨らされて、いっぱいキスされて、胸も可愛がられて……。お兄ちゃんの硬いの挟んで、いっぱい――)
ヴィヴィの小さな頭の中には、匠海との情事がまざまざと思い起こされていた。
「――は、――何にしたの?」
遠くで皆が話している声が聞こえる。
だがヴィヴィは手にした茶器を両手で包み込んでいるだけで、匠海の掌の熱を全身で感じていた。
「………………っ」
踝まである丈長のワンピースの中、ヴィヴィの膝が小さく擦り合わされる。
「――? ヴィヴィ?」
躰を蝕み始めた淫蕩な熱に囚われていたヴィヴィが、自分を呼んでいる声にはっと顔を上げる。
視線の先、母の妹である叔母が、ヴィヴィを不思議そうに見つめていた。
「え……、あ、ごめんなさい、何……?」
「だから、今シーズンのSPとFP何にしたのって……」
「あ、ああ……。えっとSPは戯曲『ペール・ギュント』の山の魔王の宮殿にて、で、FPはバレエ『眠れる森の美女』だよ」
ヴィヴィが焦りながら、今シーズンのプログラムを反芻する。
「まぁ! オーロラ姫やるの? 楽しみだわ」
女性陣が瞳を輝かせて口々に「楽しみ」と返してくれる。
しかし添えられた匠海の掌の先がピクリと動いたことで、またヴィヴィの思考はその掌だけに囚われる。