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第58章 　 　 　　　 　

「わ～い！　サラ、早く！」

　いつの間にやらプールサイドで、着ていた服を脱いで水着姿になってしまっていたジムが、姉を急かす。

「はいはい。ちゃんとストレッチしてから入るのよ？」

　そう言うサラも、水着の上に纏っていたキャミワンピを脱ぐ。

（ＯＭＧ……。神様、何故に世の中には爆乳と貧乳という、歴然たる差が存在するのでしょうか……）

　出るべきところが出ているサラは、何故か撃沈して項垂れているヴィヴィに、

「ヴィヴィ、どうしたの？」

と声をかけてくる。

「ん～。世の中の不条理を神に問うておるのだよぉ～……」

「はあ？」

「ごめん。なんでもない……」

（スタイルのいいサラと並んだら、公開処刑だよ……）

　そう思いながらも、ヴィヴィは項垂れていた頭を上げ、プールへと近づいていく。暖房が入れられているので寒くはないが、水温はどれくらいなのかと、プールの縁にしゃがみ水面に手を浸けてみる。

「あ、結構冷ため」

「あんまり温かいと、泳いでて、気持ち悪く、なるからね……」

　隣で同じように水温を確かめていたクリスが、そう呟く。

「そっか。クリスは泳ぐ？」

　そう言ってしゃがんだ状態から立ち上がったヴィヴィの視線の先、窓際のジャグジーに入っていた匠海が、ザバっと音を立てて立ち上がった。

「あ、兄さん……いたの……？」

　そこで初めて匠海に気付いたらしいクリスが、少し大きめの声で匠海に声をかける。

「ああ、お前達、入るのか？」

　こちらを振り向いた匠海が、ジャグジーを出ながら双子に視線を向ける。

「考え中……」

と返すクリスの隣で、ヴィヴィは固まっていた。

　その灰色の瞳が、膝上までの黒い競泳用水着を纏った匠海に、文字通り視線が釘付けになる。

（お兄ちゃん……綺麗……。逞しいのに引き締まってて……。ヴィヴィ、あんな素敵な男性に、抱かれてたんだ……）

　ヴィヴィがワンピースの前で、濡れてしまったほうの手をもう片方の手でぎゅっと握りしめる。

（最後の日……。抱かれた後、あの逞しい胸の中に抱き寄せられて、まだ火照ってた躰がしっとりしてて、とっても気持ち良くて……）

「ヴィヴィは？」

　うっとりと匠海に見とれていたヴィヴィに、当の匠海が問うてくる。