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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第58章          

 ヴィヴィは内心首をかしげながら、言葉を継ぐ。

「一応、ストール持ってるから、大丈夫……。……え……っ?」

 ヴィヴィは腕に掛けていた白いストールに視線を落としたが、なぜか反対の腕を匠海に掴まれ、引っ張られた。

 その暖かく大きな掌の感触に、ヴィヴィの薄い胸がとくりと高鳴る。

 驚きの声を上げるヴィヴィを、匠海がその妹の部屋へと連れて行き、扉を開けてその中へ引きずり込んだ。

「お兄、ちゃん……?」

 ヴィヴィの腕から手を離した匠海は、クローゼットへと歩を進めていく。そして躊躇なく扉を開くと何やら物色し始めた。

(な、何……?)

 ヴィヴィは訳が分からず、呆気に取られながらその背を見つめる。

「それ、朝比奈のチョイスか?」

 背を向けたままようやく口を開いた匠海に、ヴィヴィが、

「う、ううん……。カレン達に見立ててもらって……」

と答えると、匠海の小さな嘆息が聞こえた。

「だろうな……。これ、上に羽織っとけ」

「うん……」

 ヴィヴィは匠海から手渡された白いカーディガンを、おとなしくベアワンピの上から羽織って見せた。

 匠海は全身をさっとチェックすると、そのまま無言で部屋を出ていってしまった。

「な……何だったの……?」

 静かな部屋に、ヴィヴィの呟きだけが落ちる。

 改めて鏡の前で自分の姿を確認する。

 白のカーディガンは紺地のワンピースに、良く合っていると思う。

 しかし、これだと別に下に着るのは胸の下からのベアトップであってもなくても、大差ない。

(似合って、なかったのかな……)

 ヴィヴィはカーディガンをペラリと捲って、その胸元を見る。

 胸のところだけシャーリングになっていて、胸の小さなヴィヴィでも可愛らしく着られるデザインだと思うのだが。

「………………っ」

(どうせ、胸、無いですよ~だっ!!)

 ヴィヴィは心の中で匠海にそう毒づくと、むしゃくしゃする気分のまま、目の前の鏡にべえと大きく舌を出して見せた。

 ストールをベッドに放り投げて、そのまま階下に降りたヴィヴィは、ダイニングの席に着いた。

「あ~、ヴィヴィ可愛い。ベアワンピだ!」

 隣に座ったサラが、そう言って瞳を輝かせて褒めてくれる。

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