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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第58章
ヴィヴィはそれを摘み上げて読むと、
(うん……多分、永久に仲直りできないと思う……)
と心の中で返した。
壁に掛けられた時計を見上げると、もう夜中の1時だった。
泣きすぎてぼ~とした頭のまま、そこで数分立ち尽くしたヴィヴィは、クローゼットへと歩いていく。
そしてワンピースを脱ぎ捨てると、着替え始めた。
皆が寝静まっている屋敷の中、ヴィヴィは抜き足差し足で最小限の照明に落とされた階段を下りていく。
そして1階の隅にあるプールへと辿り着くと、ガラス越しに薄暗いその中を覗き込んだ。
(さすがにこんな時間に、誰もいないよね……)
ほっとしたヴィヴィは、ガラスの扉を開けてプールに入ると、壁際の電気パネルを操作して電気を付ける。
纏っていたベージュのバスローブを脱ぐと、近くにあったソファーベッドに投げて、じゃばじゃばと音を立ててプールに入っていく。
ヴィヴィしかいないプールは、その音を反響して妙に響く。
「ふふん、独り占め~……」
小さい声でそう言ったヴィヴィは、昨日と同じ水着で泳ぎ始めるが、平泳ぎで何往復かすると、少し疲れてしまった。
プールの中央でくるりと仰向けになると、その水面にヴィヴィの華奢な体が浮かび上がる。
暗めの金髪が、自分の作った小さな波に押され、水の中を漂うように広がっていく。
(ふはぁ……。やっぱり、プールいいなあ……。癒される……)
耳が水没しているため、入ってくる音はちゃぷりという水音だけ。ヴィヴィはゆっくりと瞼を閉じる。
(なんだかなぁ……。ほんと。ヴィヴィ、一体何がしたいのか、
どうすればいいのか、分かんない……。
まあ、自分がかなりガキっぽかったという事は、分かるけど……)
せっかくの最後のディナーに、酔っぱらいのように振る舞ってしまった自分。
多分陽気な親族達は「また、ヴィヴィが面白いことしてんな?」位にしか思ってないだろうが、やはりディナーにケチを付けてしまった気がして、申し訳なく思う。
(明日の朝食で、皆に謝ろう……)
そんな事を思いながらぼんやりとしていると、微かな物音が水中のヴィヴィの耳に入ってきた。
ヴィヴィは瞼を開いて耳を澄ましてみるが、その後は静かなまま。