この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第58章          

(私、昔はこんなに泣く子じゃなかったのに……。

 お兄ちゃんを好きになってから、泣いてばかりいる気がする……)

 ヴィヴィはまた泣いてしまった自分にさらに落ち込みながら、静かに口を開いた。

「お兄ちゃん、先上がっていいよ。ヴィヴィ、ここで頭冷やしていく……」

 それはヴィヴィなりに精いっぱい大人っぽく答えた返事だったのだが、

「お前一人でプールに置いとくなんて、怖くて出来るか」

 そう匠海に正論を返されて、また黙り込んでしまう。

「………………」

(確かに、体冷えてきたから、上がりたいんだけど……)

 ヴィヴィの華奢すぎる体は、既に冷たいプールの水で冷えて小刻みに震えていた。

「ほら」

 そう短い言葉でプールから上がれと促す匠海に、ヴィヴィは小さな声で懇願する。

「う、後ろ向いてて……」

「は?」

 匠海は訳が分からないといった感じで、短くそう呟く。

「で、出にくいから……」

「は……?」

 そのヴィヴィの説明でもまだ分からないのか、匠海はまた聞き返してくる。

「………………」

(だからっ! 貧相な水着姿、見られたくないんだってばっ!!)

 ヴィヴィは心の中でそう絶叫するものの、もちろん情けなさ過ぎて、匠海に説明できるはずもなく。

 その後ろで、匠海は深い溜め息を付いた。

「ヴィクトリア……。お前の水着姿が『棒っきれ』って事ぐらい、知ってる」

「……――っ!?」

「ほら、行くぞ」

 ヴィヴィの右手首を後ろから掴んだ匠海の手を、ヴィヴィはばしゃりと大きな水音を立てて、振り向きざまに振り解く。

「―――っ お兄ちゃんなんて、大っ嫌いっ!!」

 ヴィヴィは泣き腫らした真っ赤な目で匠海を睨み上げると、ザバザバと音を立ててプールから出て行く。

(よりにもよって、『棒っきれ』!? 

 そりゃあ、ヴィヴィは胸ないし、

 スケートのために体重管理しなきゃいけないから、体重絞ってるけど、

 『棒っきれ』って――っ!!)

 出入り口の近くのソファーベッドに放り出していたバスローブを引っ掴んで、その身に纏う。

 もう紐なんて縛ってる場合じゃない。

(っていうか、お兄ちゃん、

 ヴィヴィのこと『棒っきれ』って思いながら抱いてたわけっ!?

 酷いっ!!)

/2774ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ