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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第58章          

 ヴィヴィはサンダルを履くと、ばたばた音を立ててプールから飛び出していく。

 怒りにまかせてずんずんと廊下を、階段を上っていく。

(その『棒っきれ』をよくも3回も抱けたよねっ!?

 もう、ホント尊敬するわっ!

 それとも男の人って、入れられれば、いいって訳――っ!?)

 もう脳は怒りで沸騰直前だった。

 いらいらしながら3階に辿り着いたヴィヴィは、ベッドルームに入ると、扉を閉める。

「―――っ」

 ヴィヴィは薄暗い部屋の中、立ち尽くして憤りに体を震わせていたが、それもやがてなりを潜めて行って――。

「ぼ、『棒っきれ』……orz」

 そう精も根も尽き果てた声を振り絞ったヴィヴィは、床に手と膝を付く。そして、

(駄目だ……ヴィヴィ。もう、立ち直れないかも……)

 そう項垂れたヴィヴィは、「もう本当に無理~っ」と心の中で思ったのだった。






 翌日の朝。

 篠宮一行は10時のフライトの為、早朝に朝食を済ますと、親族一同に別れを告げた。

 ヴィヴィは昨日の自分の行動を謝りながら、来年の再会を皆と約束してまわる。

「おはよう、クリス、ヴィヴィ」

 今日、ロンドンのヒースロー空港経由でオクスフォードへと戻る匠海が、双子を見つけて近寄ってくる。

「おはよう、兄さん」

「………………」

 ヴィヴィは膨れっ面で、匠海の挨拶を無視して黙り込む。
 
 それを近くで見ていた母ジュリアンが、

「こら、ヴィヴィ! またしばらく会えないんだから、意地張ってないでちゃんと挨拶なさい」

「………………」

 鬼コーチモードの母の場合、ヴィヴィは絶対逆らわないが、今はただの母なので、ヴィヴィはジュリアンのことも無視しておく。

「いいよ、マム、じゃあな」

 匠海が苦笑して、ヴィヴィの頭をポンと撫でて他の親族のところへ行ってしまった。

 空港へのリムジンに乗り込んで皆に別れを告げ、車が屋敷の敷地内から公道へと出ていく。

「昔はあんなに、仲が良かったのにねえ~」

 ジュリアンがそう呆れたようにヴィヴィを見つめれば、

「ケンカするほど仲がいい、だろ? 結構結構」

と父は適当なことを言ってがははと笑い飛ばす。

「………………」

 ヴィヴィはといえば、リムジンのシートに踏ん反り返り、胸の前で腕組みをして瞼を瞑っていた。

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