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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第59章      

 瞼の上に左腕を乗せ、目を瞑る。

 耳にはリンクメイト達が、氷を削る音が入ってくる。

「………………」

(期待に、応えないと。

 みんなが見たいヴィヴィを、演じないと……)

 そう思い浮かべた言葉に、ヴィヴィの肩がぐっと重くなっていく。

「…………駄目」

 ヴィヴィはそう呟くと、寝ころんだまま小さくかぶりを振る。

(違う……それじゃ駄目だ。

 またプレッシャーに押し潰されてしまうだけ。

 そうだ。

 役になりきろう。

 それだったら自分は得意だ。

 昨年『サロメ』になりきったように――。

 SPでは、主人公のペールに、その婚約者のソルヴェイグに、

 ある時は、主人公を追い詰めるトロルに。

 FPでは、もちろん、主人公のオーロラ姫に。

 そうだ。

 そうすればきっともう、色んなことに、惑わされない――)

 ぐっと歯を噛み締めたヴィヴィは、やがて瞼の上に置いていた腕をよけ、ゆっくりと氷の上から立ち上がる。

「ヴィヴィ、大丈夫か?」

 少し離れたところで、自分の様子を伺っていたらしいサブコーチに、ヴィヴィは頷いて見せると口を開く。

「ちょっと、FPの前半を通してみたいのですが」

「ああ、いいよ」

 サブコーチはそう言うと、リンク中央でポーズを取ったヴィヴィに合わせ、曲をかけてくれる。

 FPの、バレエ『眠れる森の美女』より薔薇のアダージョが、リンクに響き始める。

 少し傾けた右頬にまっすぐに伸ばした指を絡めた両手を添え、ハープの音色と共にゆっくりと右頬を沈めたヴィヴィが、うっとりとした表情で指を解き、右手は軽く曲げて頭上へ、左手は胸の前で円を描くようにホールドする。

 バレエのデブロッペというパ(動き)を模した、5番のポジションから左の軸足首に右足を少し曲げながら添え、そのまま左足の膝まで持ち上る。そして柔軟性を活かし、つま先から伸展して頭の傍までスムーズに引き上げる。

 顔をすっと上に向けてポーズを決めたヴィヴィが、5番のポジションへと戻りバックへと滑り始める。そして助走からのトリプルアクセル。流れを保ちながら、トリプルアクセル=トリプルループ。

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