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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第10章
土曜日であった翌日の早朝。
3時に目が覚めてしまったヴィヴィは、SPのことが気がかりで再度寝付くことができず。
宮田から借りたバレエ・ガイーヌのDVDを、防音室に置かれた百インチのモニターで食い入るように観ていた。
アルメニアの山間の村に住む狩人達の集団の中に、力強く勇敢なアルメンと、血気盛んなゲオルギーがいた。
村の娘ガイーヌとアルメンは、お互いに深く愛し合っている。
一方ゲオルギーは、嵐の中で助けた山の娘アイシャを愛するようになる。
アルメンとゲオルギーは親友であったが、アイシャをめぐる疑惑から、仲違いする。
そして、狩りで断崖から落ちたアルメンをゲオルギーは助けようとせず、その結果アルメンは失明する。
ゲオルギーは良心の呵責に苦しみ、盲目となったアルメンはガイーヌとの愛に苦しむ。
収穫の祭の日、アルメンは久しぶりに行事に参加する。
狩人たちが帰ってきて、アルメンの弟子カレンから銃を手渡され、絶望の中で自ら布をはずすと強烈な光に目が眩んだ。
アルメンの目は見えるようになっていたのだ。
ガイーヌとの喜びに溢れた愛と希望のデュエット。
村人の前で自分の罪を告白したゲオルギーの手を握って、アルメンはその罪を許す――
ヴィヴィは何度か気になるところを巻き戻しながら見終わると、おもむろに立ち上がった。
幼少の頃からバレエをやっている双子の為に改良された、防音室に備え付けのストレッチ用のバーで十分準備をすると、壁の一角が鏡張りになっている場所に立つ。
宮田が求めているものは、クラッシック・バレエとは一線を画しているような気がした。
どちらかと言うと、モダン・バレエやコテンポラリー・ダンスの要素が色濃い。
と言ってもヴィヴィは、クラッシックバレエしか習ったことはないのだが。
先ほど見た剣の舞の踊りを、床の上で再現してみれば、やはりクラッシック・バレエとは異なっていた。
美麗でも技術的制限の多いクラッシックとは違い、モダンは人間の身体を使った最大限の表現なのだと思う。
グラン・パ・ドゥ・シャを鏡の前で試してみる。
このバレエジャンプはSPの中に応用されている。
ただヴィヴィが飛ぶと伝統的なクラッシックのそれになるので、宮田には納得してもらえないが。