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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第10章           

 片足の膝を曲げてから振り上げて伸ばし、同時にもう一方の足で踏み切り前方に高く跳ぶ。

 踏み切った足も後ろに伸ばし、空中ではスプリットした様になる。

 特にヴィヴィは柔軟性が高いので、180度どころではなく200度の開脚が可能となる。

 けれど、

(これじゃ駄目――)

 しっくりこないヴィヴィは、iPadを取り出して昨日の宮田の指示を確認する。

(できる限り上半身は前に倒して、後ろに伸ばした両腕は頭よりさらに高く、指全体に力を込めてめい一杯指を開く――)

 指示を頭の中に叩き込んで、再度跳躍してみる。

「あ…………」

 そこで致命的なことに気づき、ヴィヴィは困った顔をした。

 ジャンプの時に上半身は前に倒しているので、自分では鏡でジャンプを確認できないのだ。

(う~ん、たぶん出来てるとは思うのだけど)

 誰かに撮影してもらおうかと考えたとき、防音室の扉が開いた。

「ヴィヴィ……ここにいたの。そろそろ、リンク行く時間――」

 顔を覗かせ促してくるクリスに駆け寄ったヴィヴィは、迷わずその手にiPadを強引に押し付けた。

「撮ってっ!」

「え……?」

「いいから撮って!」

 勢いに圧(お)されて頷いたクリスはiPadを受け取ると、ヴィヴィの傍により撮影を始めた。

 音楽を鳴らすと、ヴィヴィはSPの頭から床の上で再現していく。

 グラン・パ・ドゥ・シャを飛び最後まで踊りきると、息を弾ませてクリスのほうを振り向いた。

「撮れた? ……クリス?」

「……凄い」

「え?」

「1日で、こんなに変わるなんて……。昨日までとは、全然違うものになってる……」

 いつもは言葉少ないクリスが、驚いた顔でそう呟いた。

 その返事にヴィヴィも自分の踊りに興味が湧き、録画を見ようとiPadに手を伸ばしたが、その腕をクリスに掴まれた。

 ずるずると防音室の出口まで引っ張られる。

「え? 何?」

「だから、リンクに行く時間……」

 有無を言わさずリンクへ急ごうとするクリスに、ヴィヴィは

「え~、もうちょっと!」

と訴えてみたが、それは聞き入れられることはなかった。

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