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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第59章      

(う、裏切ったなっ!?)

 ヴィヴィは画面下に小さく映っている自分の姿に気づき、咄嗟にそこから離れようとしたが、ジュリアンに腕を掴まれて拘束された。

「ほら、ヴィヴィも、なんかお祝いの言葉、あるでしょう?」

 ヴィヴィが恨めしそうにジュリアンを見上げる。兄妹が喧嘩をしていることは母も分かっているのだから、放って置けばいいのにと、ヴィヴィは頭の隅で思う。

 けれどヴィヴィもこのまま逃げるのは、匠海に負けた気がして癪なので、ジュリアンから匠海へと視線を移す。

(ふんっ。どんだけかっこよく着飾ったって、☆新生ヴィヴィ☆は、もうお兄ちゃんの一挙手一投足に、惑わされたりせんのだよっ)

 そう心の中で前置きすると、ヴィヴィは両腕を胸の前で組み、画面の中の匠海を睨み上げた。

「ま……、せいぜい、頑張りたまえ」

 そう低い声で発したヴィヴィの灰色の瞳は、何故か据わっていた。

 そんな妹の姿を見て、画面の中の匠海は一瞬呆気に取られた表情になったが、直後「ぶはっ」と吹き出して笑い出した。

「あんた、何様よっ!?」

とジュリアンが隣から突っ込んでくる。

(だから、☆新生ヴィヴィ☆だって、何度も言ってるじゃないか……)

 父と母も匠海につられて笑い出し、クリスも困ったようにヴィヴィを見つめてくる。

「………………」

 別に笑いを取りたかった訳じゃないヴィヴィは、唇を尖らせて「ふんっ」とそっぽを向いたのだった。






 10月に入ってすぐ、双子は今シーズンの初戦である、ジャパンオープンに出場した。

 ジャパンオープンは日本、欧州、北米の3地域によるプロアマ混合戦で、男女シングル各2名ずつ、計4名のチームによる団体戦形式で行われる。FPの演技の合計点を、チームの総合点として競われる。

 昨年も出場した双子は、同じチームメイトとなった、火野龍樹(25) と本田まりな(18)と共に戦った。

 クリスは今シーズンの使用曲を発表した時から、注目を集めていたFP『牧神の午後』が大絶賛され、高いスコアを叩き出した。

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