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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第59章
10月24日(木)。
双子は日本を発ち、グランプリシリーズ初戦となるエリック・ボンパール杯(フランス大会)の為、パリのシャルル・ド・ゴール空港へと降り立った。
約12時間のフライトを、勉強したり寛いだり、睡眠を取ったりと快適に過ごした双子が、入国審査を終えて空港ロビーへと出た途端、日本のマスコミを始めとする報道陣に囲まれた。
まさかの事態に双子は顔を見合わせたが、同行した牧野マネージャーは覚悟していたみたいだ。双子へと殺到する報道陣に、
「質問は各々3個まで受け付けますから、冷静に対応してください」
と注意を促している。先にクリスの質疑応答が行われることになった。
(や、だな……。調子が悪い時に、マスコミの相手するのって……)
恵まれたことにヴィヴィは、シニアに上がりメディアに取り上げられ始めた先シーズンは、目立って調子の悪いこともなく、報道陣からの質問にも困惑するようなことは皆無に等しかった。
しかし、今は違う。
『篠宮選手、3回転アクセルの調子はどうですか?』
「日本での練習では、精度は上がってきています」
ヴィヴィは笑顔を張り付かせて答える。
『SPとFP両方に、入れる予定ですか?』
「直前までコーチと検討して、決めたいと思っています」
『つまり、今の段階では、50/50ということですか?』
「……フランスのリンクで調整をしてから、決めます」
徐々にヴィヴィの表情が硬くなり、脇にいた牧野マネージャーが「スマイル、スマイル!」と口角を上げて見せてくる。
『3回転アクセルが基礎点8.5から、アンダーローテーションで基礎点の70%となった場合、6.0に。ダウングレードとなった場合、2回転アクセルの3.3となりますが、それならば2回転アクセルでGOEを稼いだほうが得策ではないですか?』
「もちろんそれは考慮しています。前日と当日の公式練習でのアクセルの精度を見て、本番のジャンプ構成を変える準備もしてきています」
ヴィヴィが真顔でそう言い切ったのを機に、牧野マネージャーが、
「以上で、篠宮兄妹のインタビューは終わります」
と終了を宣言した。