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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第59章      

『こちらに視線お願いしますっ』

『クリス選手とのツーショット、お願いします!』

 手を挙げてカメラを向け粘ってくる報道陣に双子は何とか笑顔を作ると、やっと解放されて移動用のバンに乗り込んだ。

「お疲れ様。多分ホテルの周りや、会場の周りにも報道陣がいると思うけれど、そちらはもう対応する必要ないからね」

 牧野のその言葉に、双子は素直に「「はい」」と頷く。

 ヴィヴィは車窓に広がるパリの街を見つめながら、唇を引き結ぶ。

「………………」

(アクセル、アクセル……五月蠅いなあ……。ヴィヴィにはアクセルしか、期待されてないってこと――?)

 自分でもアクセルに対して言われることに、最近過敏に反応してしまう自覚はあった。考えないようにしようとはしているが、如何せん、人間としての修業が足りないのか、ヴィヴィはうじうじと気にしてしまう。

 そんなヴィヴィの頭を、クリスがそっと自分の肩に引き寄せる。

「ヴィヴィ……、外野なんか、気にするな……」

「うん……」

 ヴィヴィはそう小さく頷くと、ゆっくりと瞼を閉じる。

(違う、な……。ヴィヴィだけじゃない。クリスだって、他の男子選手だって毎回、『4回転は飛ぶのかどうか』って聞かれているじゃない……)

 小さく息を吐き出したヴィヴィは、クリスの頬にキスをする。

「ありがとう……ちょっと、楽になった……」

 そう言ってにっこり笑って見せれば、

「ヴィヴィ、可愛い……」

とクリスに抱きしめられる。

(か、可愛くは、ない……)

 ヴィヴィはそう心の中で突っ込みながらも、そのままクリスに身を預けた。






 10月25日(金)。

 9:30からの公式練習を終えた双子は、午後から日本でのテレビ放映権を持つ放送局の取材を受けたりして過ごした。

「まあ、今朝の練習を見る限り、今回は安全策かな」

 ジュリアンのその一言に、ヴィヴィも頷く。ジャッジの前での公式練習で、アクセルの精度は4/6回だった。転倒1回、回転不足1回。

 その後、陸上トレーニングをして、夕食後リラックスするためにホテルのプールに少し行ってみたりして、試合前日は終了した。




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