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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第59章
「―――っ!?」
先ほどから「あほの子」扱いされたり、クリスと比べられて呆れられたり散々なヴィヴィは、ふんとそっぽを向く。
そしてクリスを手招きで呼び寄せると、近寄ってきた双子の兄の耳元で何やら囁く。
「えっと……。ヴィヴィは、兄さんと、絶交中なので、口聞きたくない……だそうです」
「はあ……?」
ヴィヴィの言い分を聞いた匠海が、間抜けな声を上げる。
「ヴィヴィ……絶交中って。あんた、いったい何歳児よっ!?」
ジュリアンが心底呆れたように、ヴィヴィに突っ込んでくる。ヴィヴィはまたクリスの耳元で、ごにょごにょ囁く。
「16歳だよ! 自分の娘の年齢も、忘れたのかっ!! ……だそうです」
板挟みになったクリスが、ヴィヴィの言葉使いそのままにジュリアンに伝える。
「こんなガキっぽい16歳を、見たことないから、敢えて聞いてんのよっ! もう、ヴィヴィはほっといて、ディナー行きましょ。もう21時だもの」
ジュリアンはそう言うと、匠海の腕を引っ張って、先を歩いていく。
「ディナー、どこ行くの?」
「ん~。このホテルのイタリアンにでもしようかしら?」
「じゃあ、俺、隣のホテル泊まるんだけど、そこの日本食、美味しそうだったよ?」
「あら! じゃあ、そこにしましょう」
ジュリアンと匠海が、そう楽しそうに話しながら先に行ってしまうので、しょうがなくヴィヴィも、二人の後を着いて行くクリスに従った。
(……なんで、お兄ちゃん、ここに、いるんだろ……)
ヴィヴィは、ホテルのロビーを抜けてエントランスへと出ていく匠海の後ろ姿を、じっと見つめる。
(まあ、今日は金曜だし、FPのある明日は土曜だし……。本当に言葉通り、観戦に来たんだよね……それも、クリス、の……)
「………………」
ヴィヴィの視線が徐々に足元へと落ちていく。
(お兄ちゃんのことは、好きだけど……大好きだけど……。
あ、愛してるけど……。
ヴィヴィ、もう、お兄ちゃんの傍に居るだけで、
頭ぐちゃぐちゃになっちゃうから……。
自分のこともお兄ちゃんのことも、解んなくなっちゃうから……)
「…………はぁ」
ヴィヴィの桃色の唇から、小さな嘆息が零れる。