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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第59章
(だから、ヴィヴィ……☆新生ヴィヴィ☆ になろうと、しているのに……)
しゅんとしたヴィヴィがとぼとぼと歩いていると、いつの間にやらクリスに手を引かれていた。
「そろそろ、仲直り、したら……?」
そう静かに忠告してくるクリスに、ヴィヴィはさらに俯く。
「………………」
「もう、半年位、喧嘩してるけど……」
「………………」
クリスのさらなる忠告に、ヴィヴィの唇がだんだん尖っていく。
(無理~~。永久にムリ~~……)
その妹の表情を見たクリスが、ぽんぽんと金色の頭を叩くように撫で、隣のホテルのエントランスへと入っていく。
「ほら、そこの双子! いちゃいちゃしてないで、さっさと来る!」
ジュリアンがそう双子を急かし、先に匠海と店の中へと消える。
「いちゃいちゃ、って……」
クリスが困惑気味にそう呟き、ヴィヴィを引っ張って懐石料理の店へと入っていく。
中庭が見える個室へと通された4人は、掘りごたつに座ると、メニューを注文していく。
「ヴィヴィは?」
いつまでもメニューと睨めっこしているヴィヴィに、前に座ったクリスが尋ねてくる。
「ん~……。あの、雑炊的なものって、ありますか?」
ヴィヴィはメニューから顔を上げると、注文を待ってくれている仲居さん風の店員に尋ねる。
「ええと、カニ雑炊ならご用意できますよ?」
「あ、じゃあ、それ下さい」
ヴィヴィはそう言って、メニューを店員に返す。
「え? そんなものでいいの? お肉かお魚、単品で頼む?」
ジュリアンがコーチとしてそう助言してくるが、ヴィヴィは首を振る。
「食欲ない……」
本当は先ほどまでお腹がペコペコだったのだが、なんだか今は胸がいっぱいだった。雑炊なら何とか流し込めるかと思って、注文したのだ。
「あら。大丈夫? 気持ち悪い? 頭痛い?」
ジュリアンが途端に心配そうな表情になって、斜め前の席から身を乗り出し、ヴィヴィのおでこに手を添えてくる。
「大丈夫……」
「熱はないわね?」
困ったように呟いて手を離したジュリアンに、もう一度「大丈夫」と返したヴィヴィは、隣の席の匠海から視線を逸らす様に、中庭に目をやる。