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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第60章          




 テレビ局の取材、表彰式、ISUの公式記者会見を終えたヴィヴィは、21時にホテルへと戻った。

 エントランスをくぐりロビーへと差し掛かると、一緒だったジュリアンが、「あ!」と嬉しそうな声を上げる。

 その視線の先を追ったヴィヴィは、ロビーでコーヒーを飲んでいる匠海を見つけた。こちらに気付いた匠海が立ち上がり、笑顔で二人に近づいてくる。

 日本代表ジャージに身を包んだヴィヴィは、とっさに自分よりも少し背の高いジュリアンの後ろに隠れる。

 何故なら、また匠海を見て胸が高鳴ってしまった自分が、悔しくて恥ずかしかったから。

「お疲れ、二人とも。クリスは?」

「Hi、匠海! あの子は田内選手と一緒に、先に部屋に戻ってるわ」

 匠海はジュリアンの返事に頷くと、その背に隠れているヴィヴィを覗き込む。

「ヴィヴィ、金メダル、おめでとう」

「……見て、たの……?」

 ヴィヴィがジュリアンの背から少しだけ体をずらすと、恐る恐る匠海を見上げる。

「そりゃ見るだろ。その為に来てるんだから」

 呆れた様にそう返してくる匠海に、ヴィヴィは頬を染めると小さく呟いた。

「……あ、ありがと……」

「今から田内選手のチームと食事に行くから、匠海も一緒に行きましょ?」

 ジュリアンは当然のようにそう言って、匠海を夕食に誘ったが、

「俺はいいよ。お邪魔だろうし、その辺で飲んでくる」

と匠海は断ってしまった。ヴィヴィがジュリアンの陰から、小さな声で呟く。

「……じゃ、邪魔じゃない、よ……?」

「今回は遠慮しておくよ」

 いつまでもジュリアンの後ろに隠れているヴィヴィに、匠海は苦笑しながらそう返す。

「……そ……」

(一緒に、行きたかったのに……)

 ヴィヴィは少し唇を尖らせながら、ジュリアンの陰に完全に隠れた。

「そう、残念ね~。匠海、明日は何時に帰るの?」

「ん~、昼くらいには帰るかな。明後日からまた授業だし……。残念だけど、夕方のエキシビまでは見ていけないな」

 ジュリアンの質問に、匠海がそう言って肩を竦めて見せる。

「じゃあ、もし時間が合えば、朝食一緒に食べましょ。8:30あたりでどう?」

「わかった」

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