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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第60章
「………………」
(この一歩を踏み出せば、女としてお兄ちゃんに抱いて貰える……。
けれど、
この一歩を踏み出しても、お兄ちゃんの心が手に入るという保証は、
どこにもない。
また同じことを繰り返し、引き返せない泥沼へと足を踏み入れるだけ……。
解っている。
ちゃんと、解っている。
けれど、そこにいるの。
ヴィヴィの欲しいお兄ちゃんが、そこにいるの。
手を伸ばせば触れられる距離にいて、
一歩を踏み出せば、女として抱いて貰えるのに。
そんな途轍もなく甘い誘惑、誰が振り切れるというの――?)
「………………」
ヴィヴィはギュッと両拳を握りしめると、ゆっくりと左足を踏み出した。
そして半身が部屋と廊下の境界線を越えた時――、
その躰は匠海に引き寄せられ、その胸に閉じ込められていた。
パタンと扉のしまる音が背後でしていたにもかかわらず、ヴィヴィはその音を聞いてなどいられなかった。
ヴィヴィの全てを貪ろうとするような、激しくて深い口付けに、身も心も翻弄されていた。
(お兄ちゃん……お兄ちゃん……お兄ちゃんっ)
腰に回された大きな掌に持ち上げられるように、ヴィヴィは背伸びをして匠海の口付けを受けていた。
縦横無尽にヴィヴィの口内を暴れてかき乱す匠海の舌に、ヴィヴィは自分からも絡めていく。
けれどそれは激しすぎて、ヴィヴィの敏感な上顎や舌下を虐めるように執拗に擦りあげられて。
(息……出来、ない……)
こんな深い口付けはまだ2回目のヴィヴィは、鼻で息をするのも忘れて酸欠で朦朧とし始めた。
それに気づいたように、匠海がはぁと熱い息を吐きながら唇を離す。
二人の唇の間に、透明な糸が張ったと思った途端、匠海はヴィヴィの首筋に顔をうずめた。
「ふっ ……ぁっ んっ」
耳の後ろに吸い付かれたかと思えば、舌全体を使って舐めあげられ、その生々しい感触に躰を戦慄かせるヴィヴィの首筋を噛むように、匠海の大きな口で食まれる。
体がびくびくと震えるのが恥ずかしいのに、匠海に触れられ口付けられるたび、それは大きくなっていく。
怖いのか、感じているのか、それとも別の何かなのか。
それさえも分からない。
ただ、気持ちよかった。