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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第11章
「ちなみにクリスのはプレイメイト・マトリョーシカよ。美女が一杯で嬉しいでしょ? ヴィヴィのはロシアの歴代大統領マトリョーシカよ」
「「……………」」
双子が微妙な表情で各々のマトリョーシカを見つめていると、ジャンナはヴィヴィの物を取り上げ中身を出していく。
「まずはプーチンでしょ? メドヴェージェフ、エリツィン、ゴルバチョフ、ブレジネフ、フルシチョフ、スターリン、レーニン、そして帝政ロシアへ遡り――ニコライ2世!!」
ベンチに “ロシア最高権力者のマトリョーシカ” を「どうだ!」と言わんばかりに並べられ、小さな顔に浮かんだのは引きつった笑み。
(ニコライ2世って、誰やねん……)
思わず関西弁で突っ込んでしまった、ヴィヴィなのだった。
その後、クリスのFSをチェックして休憩を挟み、ヴィヴィのFSの振付のやり直しの番になった。
「クリスの振り付けは、ほぼこのままでいいわ。貴方は完璧だから!」
「どうも……」
手放しでクリスを褒めるジャンナに、ヴィヴィがしょげる。
双子の兄はは要領も勘も良いから、何でもそつなく熟すのだ。
「どうせ、ヴィヴィは……orz」
「あら、別にヴィヴィが悪い訳ではないわ。私は『今シーズン、この選手はこんな感じで成長するんだろうな』と先を読んで振付をするのよ。でも今シーズンのヴィヴィは私の想像より、かなり先を行っていたのよね」
クリスと別れた後、ヴィヴィをフォローしたジャンナはベンチに腰かけると、
隣に座った生徒を、じっとその緑色の瞳で見つめる。
その瞳は真剣で、今までの軽口を叩いていた時のものとは全く異なっていた。
「5月に振付けた時とは、受ける印象が随分変わったわ。きっと、何かあったのね――?」
ジャンナの思いも掛けない指摘に、華奢な肩がびくりと震える。
彼女とは数時間前に再会したばかりなのに、ヴィヴィに起こった変化を確実に見破っていたのか。
金の前髪の下、幼い顔から血の気が引いていく。
「ジャンナ……私、別に――」
「Non、何があったかは言わなくていいわ……。思春期ですもの、色々あって当然よ。ただ――」
そこで言葉を区切ったジャンナは、ヴィヴィの瞳をひたと見据える。
「ただ……?」