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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第60章
「分かった。泣くな、ヴィクトリア……ごめん……」
匠海は最後にそう謝ると、ヴィヴィの躰をゆっくりと抱き上げ、自分の胸の中に抱き寄せた。
初めは強張っていたヴィヴィの躰が、匠海に優しく抱きしめられるうち、徐々に柔らかくなっていく。
「お兄ちゃんだけ、だよ……?」
匠海の胸に頬を寄せながら、ヴィヴィがぽつりと呟く。
「ああ」
そう返してくれた匠海は、ヴィヴィの髪を撫でながら、そこにチュッとキスを落としてくれる。
「ヴィヴィはずっと、お兄ちゃんだけのもの、なんだから……」
ヴィヴィは念押しをするように、再度呟く。
匠海に解って貰えるまで、これから何度でも言葉にして伝えていこうと思う。
涙はいつの間にか止まっていた。
そんなヴィヴィの顔を、匠海が上から覗き込んでくる。
「分かった……」
その呟きと共に、匠海の厚めの唇がヴィヴィの薄い唇に吸い付き、軽く食んで離される。
ヴィヴィは震える瞳で匠海を必死に見上げたが、その視線があまりに真剣すぎたのか、匠海はふっと苦笑し、妹の瞼の上にも口付けを落とした。
くすぐったそうに瞳を細めるヴィヴィを、匠海が覗き込む。
「分かった……、分かったよ……。ヴィクトリアは『俺だけのもの』だよ」
そう、ちゃんと自分の瞳を見つめながら口にしてくれた匠海に、ヴィヴィの潤んだ瞳が震える。
「ほ、本当……?」
「ああ」
「も、もう一度……、もう一度言って……?」
ヴィヴィはそう言うと縋り付くように、必死に匠海を見上げる。
匠海は一瞬嫌そうに眉を潜めたが、あまりにもヴィヴィの様子が必死すぎたからだろうか。
やがて、静かに口を開いた。
「ヴィクトリアは、俺だけのもの――。
お前を、絶対に誰にも渡さない。
お前が、他の誰かを見るのも、絶対に許さない」
匠海はヴィヴィの瞳をちゃんと見つめながら、そう言葉にしてくれた。
「………………っ」
(う、そ……。お兄ちゃん、が……? そんなっ ……嘘っ)
ヴィヴィはあまりの驚きで、引き結んでいた唇が開いてしまった。
「うそ…………」
そのまま心の声が漏れてしまったヴィヴィに、匠海が苦笑する。