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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第61章
『とにかく! もう絶対、危ないことしちゃ、駄目だよ?』
『うん。おにいちゃま。ごめんなさい』
そう素直に謝ったヴィヴィに、匠海がふっと微笑み、その小さなほっぺに頬ずりする。
『いい子だ。ほら、いい子にはキスしてあげる』
『うん! おにいちゃま、だいすき!』
ヴィヴィはくすぐったそうに身を捩りながらも、そう愛らしく微笑み、匠海に短い腕を伸ばしてくる。
『僕も大好きだよ、ヴィヴィ』
『おにいちゃまぁ、あいしてるっ』
最近匠海に教えてもらった、その大切な言葉を口にして、ヴィヴィは無邪気に笑う。
『あははっ 僕も、愛してるよ、ヴィヴィ』
そう言って愛おしそうに抱きしめてくれる匠海の腕の中、ヴィヴィは幸せそうに瞼を閉じる。
(じゃあ、ヴィヴィはもっと、あいしてる。
おにいちゃまよりも、もっと、もっと、あいしてる!)
10月28日(日)。
昨日までの2日間、グランプリシリーズ初戦を戦い抜いたヴィヴィは、文字通り熟睡していた。
「……ぁ ……ぅん……」
幾つもの羽根枕が散らばる中、白く抜けるような躰を横たえ惰眠を貪るヴィヴィの唇から、寝言が漏れる。
その華奢な肩に逞しい腕が巻きつけられ、ヴィヴィはようやく覚醒した。
長い睫毛を湛えた瞼がゆっくりと持ち上がり、その中の灰色の瞳が徐々に焦点を結んでいく。
自分の躰に巻きつけられた暖かい腕に視線を落とせば、徐々に昨日の記憶が蘇ってくる。
(……昨日……ヴィヴィ、お兄ちゃんと……)
昨夜、ヴィヴィは匠海から酷い事も沢山言われたが、最後には匠海に自分の気持ちを分かってもらえ、なによりいっぱい抱いて貰えた。
ヴィヴィはうっとりと瞳を細める。
おそらくヴィヴィを後ろから抱いたまま眠っているであろう匠海を起こさぬよう、そっと肩に回されている匠海の腕にキスを落とし、また自分も睡眠の世界へと落ちていこうと瞼を閉じた。
しかし、そのヴィヴィの細い躰は、後ろから匠海にぎゅうと抱きしめられた。
「……お、兄ちゃん……?」
(起きてたの……?)
小さな声でヴィヴィが呼びかければ、「おはよう」と少し気だるそうな優しい声でその耳元に囁かれる。
その声音が物凄く色っぽく聞こえて、ヴィヴィの胸と、何故か下腹部がきゅんと疼いた。