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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第61章
匠海の豹変ぶりに戸惑うヴィヴィの脳裏に、ふっと、14歳の夏の思い出が蘇った。
『匠海って長男だし、あんまり他人に甘えたりしないのかと思ってたの。
けれどこんなに――くっつき虫だったなんて』
匠海がヴィヴィの前で躰を繋げていた女性が口にしていた、その言葉。
(そっか……お兄ちゃんって、実は、物凄く――)
「どうした?」
匠海が固まったままのヴィヴィの髪に顔を埋め、ちゅっとキスを落としてくる。
そして食事を再開しようとしないヴィヴィの耳元に掌を添えると、耳と頬のラインを柔らかく撫でてくる。
(お、お兄ちゃん、女の人の前では、物凄く『甘えんぼさん』なんだ――っ!?)
「………………」
(そんでもって、ヴィヴィ……『女の人』って思われてるって事だよね……!?
幸せ……。やばい……。幸せすぎて、し、死んじゃいそう……っ)
バスタオルを巻いたヴィヴィの薄い胸が、これ以上ないほどきゅうんと疼く。
もう、この目の前の匠海にときめき過ぎて、食欲なんて吹き飛んだ。
「お、お兄ちゃん」
「ん?」
呼びかけたヴィヴィに、匠海が呟きながら、妹の華奢な肩を抱き寄せる。
(ふにゃんっ!)
ヴィヴィは心の中で変な声を出して匠海にドキドキしながらも、サンドウィッチを一つつまみ上げた。そして、
「あ~ん」
そう言いながら、匠海の口元にそれを寄せる。
「馬鹿……」
「あ~ん、して?」
ヴィヴィが楽しそうにそう言って匠海を見上げれば、兄は呆れたように肩を竦めながらも、大きな口でそれに喰いついた。
「か、可愛い……っ♡」
ヴィヴィの小さな顔がふにゃりと幸せに緩む。
(ああ、ヴィヴィ、もう本当に本当に、お兄ちゃんの虜です……。
さらに惚れました。惚れ直しました……っ)
自分の目の前で「可愛い」等とほざいた妹に、匠海が「はぁ?」とすこしキレ気味の声を上げる。
「あ゛……」
我に返ったヴィヴィが、咄嗟に匠海から視線を外す。
(いけない……、嬉しすぎて、心の声が、漏れ出てしまった……)
そんなヴィヴィに、匠海がこつりと頭突きをする。もちろん全然、痛くなんてない。
ただ、ヴィヴィの胸が壊れそうなほど、動悸が激しくなっただけ。