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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第61章
「とにかくそれ食べてしまいなさい。じゃないと、力でないぞ?」
「お兄ちゃん、手伝って~。さすがに全部は、無理です」
「しょうがないな」
10分後、何とか二人でサンドウィッチを平らげた。
ただその間、匠海に何度も唇を舐められ、ヴィヴィが失神しそうになったが。
「5時か……。もうちょっと寝ていけば?」
匠海がそう言いながら、皿とグラスをワゴンに直しにいく。
「うん。その前に、歯磨きしてくるね」
「歩けるか?」
ベッドから降りようとするヴィヴィに、匠海が少し心配そうに聞いてくる。
「大丈夫。ていうか、大丈夫じゃないと、今日滑れない……」
「それは……、申し訳ない……」
バスタオルを胸に巻いたヴィヴィに、匠海がそう言って謝るのが可愛くて、ヴィヴィは「大丈夫だよ」と微笑むとバスルームへと入っていく。
(ふはぁ……幸せ……)
ヴィヴィはパウダールームの大きな鏡の前で歯磨きをしながら、先ほどまでの匠海を思い返していた。
(お兄ちゃんが、あんなに可愛いだなんて……。それでなくても、格好いいし、綺麗だし、頭いいし、心底優しいし、たまに意地悪するけど……それさえも素敵なのに。なおかつそこに『可愛さ』が加わったら、もう、無敵人間じゃないですか――っ!?)
ちょっと世の中の不公平を恨めしく思いながらも口をゆすぎ、タオルで口元を拭ったヴィヴィだったが、すぐにその顔が弛む。
(でも、その『可愛さ』も『甘えんぼさん』なのも、今はヴィヴィに見せてくれるから、いいんだ~)
そう幸せボケな事を思いながらも、鏡の中で自分の格好をチェックし、匠海の待つ寝室に戻ろうとした時――、
「いやぁあんっ!?」
ヴィヴィの甘さを含んだ悲鳴が、バスルームに響いた。
その声に気付いた匠海が「ヴィクトリア?」と自分を呼ぶ声と、その後にこちらへ向かってくる足音。
そしてバスルームに足を踏み入れた匠海は、床のタイルの上にへたり込んで真っ赤になっているヴィヴィを見下ろし、驚きの表情を浮かべた。
「な……っ、どうした?」
ヴィヴィの前に片膝をついた匠海に、妹は泣きそうに顔をくしゃりと歪める。
「ヴィヴィ、も、もう……、エキシビ、滑れないよぉ……」
「え? どうして?」
「………………っ」