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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第61章
「きゃ~~っ!!」
小さな声で甲高い悲鳴を上げたヴィヴィは、エレベーターの中だというのに、地団駄を踏んで身体でも喜びを露わにする。
(し、幸せすぎる……! どうしよう……、こんなのっ、どうしようっ!!)
ヴィヴィは自分の両頬を掌でくるむと、あまりの幸せに緩んでしょうがない顔を隠す。
(ヴィヴィ、『お兄ちゃんのもの』になれたんだっ!
お兄ちゃんがあんな可愛らしい『素』の部分を見せてくれる、
そんな存在になれたんだっ!
メールも、で、電話もしていいんだっ!)
「う、嬉しすぎて、どうしていいのか、わかんないっ!!」
小さな声でそう呟いたヴィヴィは、目の前でエレベーターの扉が開いたのに気づき、何とか表情を引き締めると降りてロビーを抜け、匠海の止まっていたホテルのエントランスを出た。
ヴィヴィはそこでふっとホテルを振り返り、高いその建物を見上げる。
(『じゃあな』って……、同じ言葉なのに、こんなにも違う……っ!!)
4ヶ月前、自分のベッドの上で絶望と共に聞いた言葉と、同じものとは思えないそれに、ヴィヴィは瞳を細めると、まるでスキップのような軽やかな足取りで、隣のホテルへと戻っていったのだった。