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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第62章
「そうね。『悪魔ヴィヴィ』一番の被害者はきっと朝比奈ね。意外や意外、一番懐いている匠海には、反抗しなかったしね」
「そうだったの?」
ジュリアンの言葉に、ヴィヴィは興味深そうに少し身を乗り出す。
「ああ。俺の前では滅茶苦茶 可愛い、天使だった」
匠海はそう言うと、物凄く嬉しそうに微笑む。
(て、天使って……)
心の中でちょっと引いたヴィヴィは、乗り出していた身も引き、隣のクリスを振り返る。
「く、クリスも?」
ジュリアンが小さく首を振って見せる。
「クリスはほとんど、反抗期、無かったわ。あ、でも、この子は生まれ落ちたその時から無口だったから、本当は心の中では反抗していたのかもね。外に出さないだけで」
「生まれ落ちた、その時から、無口……」
クリスがそうぼそりと溢した呟きに、ヴィヴィが破顔する。
「なんか、かっこいいね、それ!」
「本当に無口な赤ちゃんでね。ヴィヴィが『おぎゃあ』って3回泣く間に、クリスは0.5回泣いてたわ」
「えぇ~……」
ジュリアンがそう面白そうに言うのを、ヴィヴィが驚きの表情で見つめる。
(それ、ヴィヴィがよく泣く子だったのか、クリスがあまりにも泣かない子だったのか、どっちだろう?)
たぶん両方だな……とヴィヴィは心の中で思う。
「クリスも天使みたいに可愛かったよ。今も可愛いけど」
匠海はそう言って、斜め前のクリスに極上の笑みを浮かべた。
「ど、どうも……」
クリスも若干引き気味で、兄に礼を言う。
そんな3兄妹のやり取りに苦笑したジュリアンが、口を挟む。
「まあ、話が逸れたけど……、第二反抗期は12~13歳頃に現れるのよ」
「ヴィヴィ、今、16歳だけど?」
不思議そうに尋ねてくるヴィヴィに、ジュリアンは口の端をわざと歪めて嗤ってくる。
「まあ、ヴィヴィは『お子ちゃま』だからねえ~。平均からずれてても、全然不思議じゃないわ」
そのジュリアンの言葉に、目の前に座った匠海がくすりと笑う。
ヴィヴィはそんな兄の顔を見つめると、膝の上に置いたナプキンをくしゃりと握りしめた。
(そんな『お子ちゃま』は、昨晩と今朝、お兄ちゃんにいっぱい、抱かれたの……)
「………………」
大きな灰色の瞳が、ふるりと震える。