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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第62章
そして最後にヴィヴィに向き直った匠海は、
「ヴィヴィは、もっと頑張んなさい!」
と何故か妹の自分にだけは厳しい事を言ってくる。
「えぇ~……。が、頑張る……」
実はまだ「仲直りした」って言わないほうがいいんじゃ? と心の中で思いながらも、目の前でヴィヴィに両腕を広げてくれた匠海の胸に、素直に飛び込む。
「ふ……冗談。お前も無理しすぎるなよ? 結構すぐ熱、出すしな」
「うん……。お兄ちゃん。またね?」
ヴィヴィを軽くハグしてその金色の頭をポンと叩いた匠海は、「じゃあね」と言い残し、大学のあるオックスフォードへと帰って行った。
「…………。よっし、頑張るぞっ!」
一瞬の沈黙の後、そう言って気合を入れたヴィヴィは、皆と別れて自分の部屋へと戻り、エキシビションの練習のため、準備を始めた。
フランスから戻ってすぐ、双子は11月の頭に予備校の模試を受けた。
『センター試験高校生レベル模試』という名のそれは、「高2の夏までにセンター試験で80%を得点する」ことを目標に各回の問題が作られており、ヴィヴィは一応クリスの予想通りの点数は取れていたらしい。
「ありがとう、クリスのおかげだよ」
ヴィヴィは帰ってきた結果表を見つめていた瞳をあげると、その先に座っているクリスを見てそうお礼を言う。
「僕を信じて、付いてらっしゃい……」
そう言ったクリスは、掛けてもいないメガネを、ずり上げる真似をしてヴィヴィを諭す。
「ははあ~。クリス様~ m(_ _)m」
クリスのその言葉に平伏して見せるヴィヴィを、後ろから様子を見ていたらしい朝比奈が、くすりと笑っていた。
双子にとってのグランプリシリーズ2戦目――NHK杯。
そのTV放送用のインタビューを、試合の3日前、ヴィヴィはリンク脇のカフェで受けていた。
「今回のグランプリファイナルは、2022年のオリンピック開催地、ドイツのミュンヘンが舞台ということもあり、是非ともファイナルに行き、未来のオリンピック会場を体感したいという選手が多いと思います」
アナウンサーの言葉に、ヴィヴィは頷いて見せる。
「はい。私も他の選手と同じように、絶対にファイナルへの切符は掴みたいと思っています」