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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第62章
「ミュンヘンって、12月、どれくらいの気温なんだろ?」
「ええと~、最高3℃、最低-2℃だって。寒そっ」
皆が酒と食事を口にしながら楽しそうに会話するのを、ヴィヴィは耳に入れながらもワンピースの膝の上では、スマートフォンを弄っていた。
匠海からのメールを確認したヴィヴィの頬が、ふにゃりと緩みまくる。
『 NHK杯優勝、おめでとう。
それに、お疲れ様。
SPとFPで3本もアクセル決めたこと、英国でもニュースになってるよ。
そして、ファイナル進出、おめでとう。
ミュンヘンで会えるのを、楽しみにしてる。
色々大変だと思うけれど、体調崩さないよう、頑張りなさい 』
オックスフォードは今、お昼の12時頃。
日曜日の今日は、きっとジムに行って汗を流したり、読書をしたりしているのだろう。もしかしたら休日のオフィスに行っているかもしれない。
(もう少しで、お兄ちゃんに会える。アクセルも絶好調だし、ヴィヴィ、今、超幸せ~っ!!)
ヴィヴィはそう頭の中で叫びながら、指先で首元のネックレスに触れる。
(これも全て、お兄ちゃんと、この幸運のお守りのおかげ……)
このネックレスが戻ってきてから、ヴィヴィは何故か3回転アクセルの調子が戻った。
その復活ぶりは、周りが目を見張るほど顕著なものだった。
元々、プレッシャーというメンタル面が不調の大きな理由だった為、今までどれほど自分が匠海という存在に、スケート面でも支えられてきたかを痛感した。
(お兄ちゃんは、私の大切な人でもあり、愛している人でもあり、勝利の女神(?)でも、あるんだ……)
ヴィヴィはそう心の中で実感すると、近くにいたNHKのマスコット・どーも君と記念写真を撮るべく、席を立ったのだった。