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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第62章
『まずはファーストジャンプ、3回転アクセルはどうか――?』
「トリプルアクセル。高さも流れもあり、回転不足もありません」
『ファイナルでも決めてみせました! これが篠宮選手の強さ! 次の3回転+3回転はどうかっ!?』
「トリプルルッツ、トリプルトウループ……今見た限り、エッジエラーもなく、降りた後の勢いもあります」
『見事! コンビネーションも鮮やかに決めました』
「レイバックスピン……フライングチェンジフットスピン。回転速度も速く、一つ一つとても丁寧に熟しています」
『まるで怒りを爆発させるような振り付けで、ジャッジへのアピール。そして演技後半のジャンプはどうか?』
「ステップからのトリプルフリップ。片手を上げながらのジャンプと降りた後の振り付けがとても印象的で映えます」
『さあ、最後のステップシークエンスです』
「徐々に興奮し加速していく音楽と、とても同調しています。正直フランス杯では初戦の緊張のためか、このステップで曲に振り回されている感があったのですが、NHK杯もこのファイナルも、音をよく捉えてきちんと踏むことが出来ていますね」
『篠宮選手の感情の渦に、引き込まれそうになるステップです』
「チェンジフットコンビネーションスピン……最後のビールマン、綺麗ですね」
『ラストは頭を抱えたところから、怒りを爆発させるようにフィニッシュ! 見事ノーミスでSPを滑り終えました!』
「はい。見ているこちらも興奮させられる、凄いプログラムでした」
『篠宮選手も満足そうな笑顔です。小さくガッツポーズも出ています。八木沼さん。SP全体を通しての印象はどうでしたか?』
「はい。篠宮選手は今シーズン、緊張と緩和の使い分けが非常に上手くなりましたね。実はこれ……、兄のクリス選手の専売特許だったのですが、やはりいつも傍で練習をしているヴィクトリア選手は、感化されているのでしょうね」
『本当に、男女シングルの最高峰が毎日切磋琢磨して、お互いを磨き上げている証拠ですね!』