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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第62章
「いいよ。よっぽど嬉しかったんでしょ? ご無沙汰しています、お兄さん」
慌てて荷物を受け取ったヴィヴィに、牧野は笑ってそう言うと、匠海に挨拶する。
「お久しぶりです。牧野さん。いつもうちの双子がお世話になっています」
軽く頭を下げる匠海に、牧野が「どういたしまして」と笑う。
「クリスはともかく、この子は大変でしょう? 超が付くほど我が儘娘だし」
そう言って意地悪っぽく笑った匠海は、ヴィヴィの金色の頭をがしがしと荒く撫でる。
「そんなことないですよ? ヴィヴィもクリスも、とても素直だから僕も助かってます。ま、ちょっとヴィヴィは、記者会見とかで機嫌が顔に出るのが、困りものですが」
牧野は「めっ」とヴィヴィを諌める様にそう言うと、苦笑する。
「き、気を付けます……」
首を竦めて見せたヴィヴィに、男二人は笑い合う。
「あ! 匠海! 到着してたのね?」
嬉しそうな声が聞こえて振り返ると、ジュリアンとクリスがエントランスへと入ってきたところだった。
「マム。1ヶ月ぶり。双子のFPには間に合ったよ」
こちらも娘同様、駆け寄ってきて匠海に飛びついてくる母ジュリアンに、匠海は苦笑してハグする。
(あ……ずるい……。ヴィヴィにはハグしてくれなかったのに……)
ジュリアンにやきもちを焼いたヴィヴィの目の前で、匠海はクリスにもハグをして再会を喜ぶ。
「ちゃんと食べてるの? ちょっと痩せたんじゃないの? 衣食住をきっちりしないと、五十嵐を送り込むわよっ!?」
矢継ぎ早にそう質問するジュリアンに、匠海は「大丈夫だって。それに寮なんだから、執事はいらない」と笑い飛ばす。
「あ……僕、シャワー浴びて着替えてくる」
腕時計を見てそう言ったクリスは、「兄さん、夕食会、来てね……?」と匠海に言って部屋へと戻って行った。
「夕食会?」
匠海が不思議そうにジュリアンに尋ねる。
「今から日本人選手とその関係者で打ち上げをやるの。匠海も来なさい」
「俺はいいよ。関係者じゃないし」
フランス杯と同じく遠慮した匠海に、ジュリアンが人差し指を息子に向けて強めに諭してくる。
「何言ってるのっ! 関係者でしょ!? 家族なんだから」