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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第62章
「そうですよ。他の選手のご家族も、皆さん参加されますよ?」
牧野マネージャーもそう言って、匠海に微笑む。
「お兄ちゃん、夕食会行かないなら、ヴィヴィも、行かな~い」
ヴィヴィは小さく唇を尖らせると、匠海のコートの袖を摘まみながら我が儘を言う。
「馬鹿。お前は他の選手達と行って来なさい」
「だってお兄ちゃん、せっかく今日、オックスフォードから来てくれたのに、明日のお昼過ぎには帰っちゃうんでしょう?」
匠海は大学が休日の土日に、わざわざロンドンから飛行機で2時間も掛けて、ここドイツのミュンヘンまで双子の応援に駆け付けてくれたのだ。オックスフォードからここまでの総移動時間は、4時間を超えるはずなのに。
「そうよ~、匠海。一緒に行きましょう?」
そのジュリアンのもうひと押しに、匠海も不承不承といった感じで折れた。
「しょうがないな。じゃあ、お邪魔します」
「「やった!」」
ジュリアンとヴィヴィが同時にそう言ってハイタッチするのを、匠海は困ったように笑って見ていた。
日本チームの夕食会という名の打ち上げは、選手陣のホテルのすぐ裏手にある日本料理店にて行われた。
「かんぱ~いっ! みんな、ファイナル、お疲れ様っ!!」
羽生(はぶ)のその乾杯の音頭で、総勢40名の日本チーム関係者達がグラスを合わせあう。
「おめでとう~!」
「お疲れ様~っ!」
「しかし、次は10日後の全日本か……」
「いつもながら、タイトなスケジュールだよねぇ~」
双子が座らされたのは、広いお座敷の上座で、周りは選手ばかりが座っていた。
「しかしあれだな。うちらの中で、双子だけ未成年で、酒飲めないという……」
ペアのマーヴィン藤堂が、残念そうに双子の顔を交互に見つめる。彼はお酒大好きなのだ。
「うちのマリアもまだ19歳だから、飲めないよ」
アイスダンスのアルフレッド渋谷が、隣に座ったマリアをちらりと見て指摘する。
「あ、そうだったね。マリアは19歳か~」
「この戦の後の美酒を飲めないとは、可哀相に!」
口々にそう言い合う選手達の中、クリスがぼそりと呟く。
「ヴィヴィは、牛乳でも、酔えるから……」
「え? 本当?」
皆が、隣同志で座っている双子を見比べる。