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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第62章
「え~。アルフレッドは結構、お買い得だよ~? 優しいし、面白いし、頭もまあまあいいし」
マリアは持ってきていた化粧ポーチから口紅を取り出すと、鏡を確認しながら塗り始める。そんな彼女を、ヴィヴィは鏡越しに見つめて口を開く。
「……マリアは、アルフレッドがヴィヴィと付き合っても、いいの?」
「もちろん! なんならそのまま結婚してほしいくらい。そしたら双子と姉弟になれて、毎日退屈しなくて楽しそう!」
本当に楽しそうにそう言うマリアから、ヴィヴィは視線を逸らし、小さな声で呟く。
「ふうん……ヴィヴィは、やだよ……?」
「ん?」
「ヴィヴィは、うちのお兄ちゃんが他の女の人と付き合ったら、やだ……」
そう子供っぽく言ってむくれるヴィヴィに、マリアが鏡越しではなく、直接隣のヴィヴィを見返してくる。
「OMG……。これが世に言う『ブラコン』ってやつね? そうなのねっ!?」
「マリア……アメリカ在住なのに、なんでそんな日本語知ってるのよ……」
「常識よ、常識! そっか、ヴィヴィは『ブラコン』で、クリスは『シスコン』か~。やっぱり双子ね」
そう言ってあははと笑い飛ばしたマリアに、ヴィヴィは肩を竦めると、個室へと入って行った。
約2時間の夕食会が終わり、日本料理店の前の歩道では、皆がお別れをしたり、次の店に飲みに行こうと誘い合ったりしていた。
腕時計で22:30と時間を確認したヴィヴィは、40名の人だかりの中から匠海を探す。
「匠海も2軒目、行くわよ~っ!」
ヴィヴィの視線の先、酔っ払いと化した母ジュリアンが、匠海の腕をがしと掴み、2次会へと連れて行こうとしていた。
「いや……結構飲んだし、もう眠い……」
困ったようにそう言って断る匠海の傍に、ヴィヴィは駆けていく。
「お兄ちゃんはマムみたいに『吞んだくれ』じゃないんだから、ダメだよ!」
そう言ってジュリアンが掴んでいた匠海の腕を、ヴィヴィが後ろから取り上げた。
「まっ!? 実の母でありコーチでもある私に『呑んだくれ』呼ばわりとは! このお酒の味も知らない『お子ちゃま』めっ!!」
「むぅ……」