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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第62章
(ヴィヴィ、チューハイなら飲んだことあるもんっ 真行寺さんの部屋で、ジュースと間違えて、だけど……)
けれどそんな事を口にした日には匠海からも母からも、周りの皆からも滅茶苦茶怒られるのを分かっているので、ヴィヴィは何も言い返せなかった。
「しょうがないわね……。じゃあ匠海、明日、一緒に朝食取りましょうね?」
「分かった。マム、飲みすぎないようにね?」
「分かってるわよ~。さあ行きましょう、みんな! やっぱ、ドイツだもの、ドイツビールとウィンナーよね!」
ジュリアンは他の選手のコーチ陣と共に、ドイツの夜の街へと消えて行った。
「ヴィヴィ、Thank You……助けてくれて」
匠海はそう言って苦笑すると、ヴィヴィの頭をポンと撫でる。
「ううん。お兄ちゃん……えっと、その――」
ヴィヴィは急に頬を桃色に染めると、俯いて恥ずかしそうに口を開いたが、
「ヴィヴィ、兄さん……」
後ろからクリスに声を掛けられ、ヴィヴィは口を噤む。
(マリアといい、クリスといい……今日はついてないな、ヴィヴィ……)
「ああ、クリス。二人とも、今日はお疲れ。ゆっくり休めよ。じゃあ、また明日」
匠海はそう言うと、双子を見比べて、それぞれの頭を撫でる。
「うん、明日ね……」とクリス。
「う、うん……おやすみなさい」とヴィヴィ。
そんな双子に微笑むと、匠海は近くの公道に通りがかったタクシーを捕まえ、自分のホテルへと帰って行ってしまった。
「………………」
(お兄ちゃん……、帰っちゃった……)
ヴィヴィは半ば呆然としてその姿を見送っていたが、やがてクリスに手を引かれ、自分達のホテルへと戻る。
ホテルのロビーには、ヴィヴィと同室の宮平知子が他の選手たちと話し込んでいた。
「あ、ヴィヴィだ。じゃあ、皆、また明日~」
宮平がヴィヴィに気づき、皆に挨拶してこちらへとやって来る。
「いっぱい食べちゃった~。お腹一杯。ヴィヴィ、先にお風呂入っていい?」
お腹をさすりながらそう尋ねてくる宮平に、ヴィヴィは「いいよ」と微笑んで答える。
クリスも同室の羽生を見つけたので、そこで別れた。