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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第64章
最初に感じたのは、肩にかかる暖かい何か。
次に感じたのは、自分の背中・腕・太ももに触れる逞しい躰。
ちゃぷん、という水音と共に、ヴィヴィが少しずつ覚醒していく。
「――リア……、ヴィクトリア……」
耳元で優しく囁かれる自分を呼ぶ声に、ヴィヴィはぴくりと身じろぎし、長い睫毛を湛えた重い瞼を上げていく。
その灰色の瞳が捉えたのは――窓の外に広がる夜景。
(……え……? 夜景……なんで……?)
ぼうとする頭で不思議に思いながら視線を下げると、大理石の中の丸いバスタブに張られた湯には、自分の物らしい両足と、もう一人――。
「お、お兄、ちゃん……?」
そう呟いて振り返れば、すぐ傍にある匠海の端正な顔。
「起きた?」
「う、うん……」
(ヴィヴィ、寝ちゃったんだ……)
まだぼうとする頭でそう思ったヴィヴィだったが、その直後、ぼんっと頭の中に先刻までの自分が甦る。
匠海に尻を向け、跨った腰に下から突き上げられ、シーツにしがみ付くという、あられもない姿でよがり狂っていた自分。
(ぎゃ~~っ!?)
いきなり真っ赤になって匠海から視線を外したヴィヴィに、兄は後ろでくすりと笑い、その胸に背を預けている妹の躰を抱き寄せる。
「は……、恥ずかしい、よっ」
蚊の鳴くような細い声でそう言って、躰を強張らせたヴィヴィに、
「ベッドで全裸をしげしげ見られるのと、お湯の中で見られるのと、どっちがいい?」
と匠海が選択を迫ってくる。
「こ、こっち……」
どっちも恥ずかしいがどちらかといえば、こちらのほうがマシだ。
そんなヴィヴィの剥き出しの肩に、時折匠海が掌で湯をすくってかけてくれる。
「寒くないか?」
とてもリラックスした声で耳元に尋ねてくる匠海に、ヴィヴィはこくりと頷く。
湯の温度は匠海の体温とほぼ同じで、なんだか全身を兄に抱きしめられていると、勘違いしそうなほど気持ちいい。
(なんだか、凄く、大事にされてる気分……)
ヴィヴィを後ろから抱きしめてくれる逞しい腕は、妹の腕を優しく撫でて揉み解してくれるし、金髪の隙間からは耳や首に軽く口づけをくれる。
(なんか、気恥ずかしい……)