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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第64章
「や、夜景……凄いね……」
「ああ。これは、お祝い」
「え……?」
匠海のその答えに、ヴィヴィは小さく首を捻る。
(お祝い……? 今日、何かあったかな?)
「えって……。ヴィクトリアのグランプリファイナル、金のお祝い」
「えっ!? う、嘘……、あ、ありがとうっ」
「どういたしまして」
匠海はそう言うと、またヴィヴィの首筋に唇を押し付けてくる。
「あれ……? でも……、ホテルの予約とる時点では、ヴィヴィが優勝するかは、分からなかったでしょう?」
「ああ。けれど優勝するだろうなと思っていたし、出来なくても、慰労……?」
そう言ってふっと笑った匠海に、ヴィヴィの心がとくりと波打つ。
「……優しいね、お兄ちゃんは……」
(ずっとこの人に、深く愛されたいと、望んできた……)
お湯の中に沈んでいた匠海の大きな両手を手に取ると、ヴィヴィはその掌を自分の両頬に添える。
湯で温められてしっとりとしたその気持ちよさに、ヴィヴィはうっとりと瞳を細める。
「………………」
(こんな私にも、ここまで優しくしてくれるお兄ちゃんが、
誰か他の女性を本気で愛してしまったら、
ヴィヴィ、正気でいられるだろうか……)
「俺が優しいって、知らなかったのか?」
匠海が耳元で囁いてくる言葉に、ヴィヴィは擽ったそうに肩を竦める。
「……ふふ。知ってたよ。本当にありがとう。それに――」
「ん?」
リラックスした相槌をくれる匠海に、ヴィヴィは微笑んでその先を口にする。
「ヴィヴィのこと、最初からここに呼んでくれるつもりだったって事が、一番嬉しい」
「おや、えらく素直で、いい子だな?」
「知らなかったの?」
先程の匠海を真似たヴィヴィに、兄が苦笑する。
「知ってた」
ヴィヴィはくすりと笑いながら、自分の頬に添えていた匠海の手を開放すると、眼下に広がる夜景に視線を移す。
「綺麗……このホテル、この辺で一番高い建物なんだね?」
(幸せ……お兄ちゃんと、こんな風に触れ合いながら、素敵な夜景を見られて……)
「ああ、だからこんなことをしても、誰からも見られない」
匠海はそう言うと、ヴィヴィの顎に指を添えて後ろを振り向かせると、自分も身を屈めてその唇を奪った。