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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第12章
「篠宮さんの得点――123.18点。総合得点――188.04点。現在の順位は第一位です」
『やりました! 篠宮選手。シーズンベストをまた更新して堂々の第一位。双子のお兄さん、クリス篠宮選手と合わせて、全日本ジュニア二連覇です!!』
「これは、また――すごい成長ぶりだな」
日曜日の午後。
篠宮家のライブラリーでは、全日本ジュニアを仕事の都合で観戦できなかった父の為に、皆で集まりソファーに陣取って録画を見ていた。
番組が終わりテレビを切った父が、少し放心したような状態でヴィヴィの演技に感嘆の声を上げた。
が、当の本人のヴィヴィは、ずっとテレビモニターではない方向に意識を向けていたため、父の賞賛に気付かなかった。
「ヴィヴィ……?」
大きなクッションを膝に乗せてギュッとそれを抱きしめたまま反応しないヴィヴィに、隣に座っていた父が身を乗り出してヴィヴィの視界に入り込む。
「え……? あ、ごめんなさい……何?」
「何って……。お前の演技が先シーズンに比べ、格段に成長しているっていう話」
困ったように笑って娘の片頬をつねった父に、ヴィヴィは「いたた……」と大げさに反応してみせる。
「それはどうも、ありがとう」
クッションに金色の頭をボスとぶつけてお辞儀して見せたヴィヴィは、感謝を述べる。
「俺は現地で見てたけど、離れたところにいてもあの “達観の微笑み” を見たときは、一瞬ドキッとしたよ――」
父の隣――ヴィヴィの一つ向こうに座っていた匠海が、そう言って妹のことを褒めた。
(……ほんと? お兄ちゃんが、私を見て、鼓動が少しでも振れるなんてこと……あるの――?)
遠慮がちに匠海を見つめたヴィヴィと、妹の隣に座っているクリスを交互に見ながら匠海は微笑む。
「最近、周りからもクリスやヴィヴィのこと、根掘り葉掘り聞かれるようになったよ。二人とも可愛いって褒めちぎられる。兄としては鼻が高いよ」
久しぶりに目にした匠海の笑顔に、ヴィヴィの目の下がほんのりと赤くなる。
黙ったままのヴィヴィに代わり、クリスが「あんまり変なこと、言わないでね……」と兄にクギを刺す。
「変なことって、クリスがいっつもヴィヴィにくっついて離れない……とか?」
悪戯っぽくそうクリスを挑発して、匠海が破顔する。