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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第64章
いつもは軽く降ろされている前髪が、濡れて生え際から後ろに撫で付けられているだけで、与える印象ががらりと変わる。
濡れてさらに輝きを増した匠海の漆黒の黒髪、見た者全てを虜にするような美しい灰色の双眸に、ヴィヴィがうっとりと見惚れる。
「綺麗……」
ヴィヴィの手から出しっぱなしのシャワーヘッドが落ち、湯の張られたバスタブの中で暴れるように跳ねる。
そんなことさえ視界に入らないように、ヴィヴィは目の前の匠海の唇に引き寄せられるように口付けた。
両手で濡れた匠海の頭をまさぐりながら、ヴィヴィは自分の舌を兄の口内に忍ばせる。
匠海の舌を見つけて絡め捕り、執拗に嘗め回す。
(足りない……、こんなのじゃ、足りないっ)
自分の稚拙な口付けがもどかしい。
匠海なら口付け一つで、すぐに自分のことを蕩けさせてしまうのに。
ヴィヴィはせめて気持ちだけは匠海に負けないようにと、角度を変えてまた深く兄の口内を貪る。
(私のもの……。
お兄ちゃんは、私だけのものっ
絶対に、絶対に、誰の手にも渡さない――っ!!)
その執着とも取れる気持ちのまま口付けを繰り返すヴィヴィを、匠海がその華奢な肩を掌で包んでゆっくりと剥がしていく。
ヴィヴィの薄い唇から、はぁと熱い吐息が零れるが、目の前の匠海には妹に掻き回された濡れた黒髪以外、乱れたところは皆無だった。
匠海が出しっぱなしのシャワーを止めるのが目に入る。
自分とは違って冷静な匠海に、ヴィヴィの焦りが募る。
バスタブの縁に座ったまま、目の前に立ったヴィヴィを見上げてくる匠海が、少し怖くも感じるのは何故だろう。
そして匠海は何故か何もしてこなかった。
肩幅に開かれた引き締まった両太ももの付け根は、もうその逞しい腹筋に触れる位、立ち上がっているのに。
ヴィヴィの瞳が、匠海の陰茎に釘付けになる。
(早く、早くお兄ちゃんが欲しい……っ)
躰の奥底が疼き、何かがとろりと溢れ落ちる。
濡れたままの金色の髪からぱたぱたと落ちる水滴とは、明らかに異なった速度で滴り落ちるそれに、匠海が気づいて苦笑する。