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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第64章
不思議そうに匠海を見つめるヴィヴィに、兄が口を開く。
「ヴィクトリア。また俺の夢、見てただろ?」
「え……?」
「また、寝言で俺のこと呼んでた」
不思議そうな声を上げたヴィヴィに、匠海がそう説明してくれる。
「あ……それで、起しちゃった?」
「まあね」
「ごめん、ね?」
(ヴィヴィ……、もしかして、かなり寝言、五月蠅い人なのかな……?)
少々自分の寝姿が心配になったヴィヴィを、匠海が腕を伸ばして抱き寄せてくれる。
「全然いいけれど……。どんな夢見てたんだ?」
そう言って見つめてくる匠海の瞳が優しくて、ヴィヴィはほっとする。
「う、うん……。ヴィヴィ、夢の中でお兄ちゃんのペットになってた」
「犬……とか?」
匠海はそう言いながら、ヴィヴィの頬に口付けを落としてくれる。
「ううん……。ミニブタさん……」
「ぶ、豚……?」
ヴィヴィの答えに、何故か匠海がどもる。
「うん。ヴィヴィね、すごく小さなピンク色の豚さんなの。で、ご主人様のお兄ちゃんに何度も『お兄ちゃん、ヴィヴィだよ! お兄ちゃん、大好きだよ!』って言ってるのに、何故か『ブヒブヒ』としか喋れないの……。お兄ちゃんはヴィヴィの、くりんくりんの尻尾ばっかり弄って遊んでるし……」
「尻尾……」
匠海があっけに取られたように、その言葉を反芻する。
「う~~ん。これは、あれかな……? もしかして、太らないよう気を付けなさいという、神様の暗示――?」
そう言って至極真面目な表情で唸るヴィヴィに、抱き寄せていた匠海が破顔する。
「ぶはっ 本当に可愛いな、ヴィクトリアは!」
「……え……?」
(ま、また、『可愛い』……? お兄ちゃん、それって……)
昨日に引き続き匠海から発せられる、言われ慣れないその単語に、ヴィヴィは困惑する。
そんなヴィヴィに覆い被さった匠海は、上から妹の顔を覗き込んでくる。
「こんなに中身は『お子ちゃま』で可愛らしくて、愛らしい顔をしているのに、俺の前でだけエッチで……。何度も抱いて、それを確かめたくなる」
匠海はそう言うと、とても愛おしそうに瞳を細め、ヴィヴィの顔に小さなキスを何度も落としてくる。
「お兄、ちゃん……?」