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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第64章
じんじんと痺れ始めた桃色の尖りに匠海が吸い付くと、ヴィヴィの腰ががくがくと震える。
そんなヴィヴィを感じ取った匠海が、その耳元で囁いてくる。
湿度を含んだ熱い吐息が耳朶を濡らし、それだけでもヴィヴィは感じ入る。
「ヴィクトリア……。俺が、欲しいか?」
ヴィヴィは聞かれた通り、匠海の下でこくりと頷く。
しかし先ほどまで零れていた甘い声が、ぴたりと途切れた。
「………………」
(……お兄……ちゃん……?)
「ヴィクトリア……。俺が、欲しいか?」
再度尋ねられたその言葉に、ヴィヴィがぎくりと躰を強張らせる。
うっとりと虚空を見つめていた灰色の瞳が、徐々に震え始める。
『ヴィクトリア……。俺が、欲しいか?』
『ならば、もっと俺を求めろ……。
泣いて縋って、足元に跪いて、全身全霊で俺を乞え――』
昨夜匠海に言われた言葉が、脳裏に蘇り、ヴィヴィは瞳を見開いた。
「……――っ」
匠海の胸に縋っていた細い手が、小さく震え始める。
(これ以上、どうしろというの……?
こんなにも心からお兄ちゃんの事を愛しているのに、欲しているのに、
ヴィヴィ、どうすればお兄ちゃんに振り向いてもらえるの……?)
そう想い、上になった匠海を見上げれば、兄はそんな妹にふっと微笑む。
白い乳房に這わせていた両手が離れ、ヴィヴィの小さな顔を包み込んでくる。
上から灰色の瞳に覗き込まれ、ヴィヴィはその瞳を見つめ返すことしか出来なかった。
(怖い……これ以上、ヴィヴィの中に、入って来ないで……)
まるで魂さえも吸い取られそうなほど美しいその双眸に、ヴィヴィは恐怖を覚えてぞくりと躰を戦慄かせた。
「お兄ちゃん……お願い……。
これ以上、ヴィヴィを虜にしないで……。
怖いの――」
ヴィヴィが消え入りそうな声で、必死に匠海にそう懇願する。
(お兄ちゃんに溺れて……、
お兄ちゃんの事以外、何も考えられなくなって、何も出来なくなって。
お兄ちゃんがいないと生きていけなくなりそうで、怖い……。
だってお兄ちゃんは、ヴィヴィのこと――)
そのヴィヴィの思考を、匠海がたった一言で断ち切った。