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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第64章
ヴィヴィは視線の先、大きな窓の外に広がる朝のミュンヘンの街並みを見下ろしながら、そっと自分の下腹部をバスローブ越しに触れた。
明け方に匠海に抱かれた時に感じた鈍い痛みが、まだ少しそこに残っている気がした。
(お兄ちゃんが、ここに居たという、証拠……)
そう思いゆっくりと瞼を閉じたヴィヴィは、またうとうとしてしまったのか、匠海に声を掛けられて覚醒した。
「痛いか……?」
「……え……?」
いつの間にか目の前に立っていた匠海を、ヴィヴィがゆっくりとした動きで見上げる。
「悪い……少し、血が滲んでいた」
匠海の言葉の意味が咄嗟には分からないヴィヴィだったが、後に掻き出したものの中に血が混じっていたのだろうと合点した。
「大丈夫だよ? 今、痛くないし……」
「いや……。ごめん。もうしない様に気を付ける」
「お兄ちゃん……?」
「ちょっと、おかしくなっていた……。ヴィクトリアに、また触れられなくなるのかと思って……」
「……え……?」
ヴィヴィはその匠海の答えに、瞳を瞬かせ、頭の中で先ほどの言葉を反芻する。
『ヴィクトリアに、また触れられなくなるのかと思って……』
(……お兄ちゃんも、そう、思ってくれるの……?)
意外そうに見上げてくるヴィヴィを、匠海は抱き上げると、自分の膝の間に横抱きにして座った。
「嬉しい……。そう思ってくれるだけで、充分」
そう言って匠海を見上げてにこりと微笑むと、上半身をぎゅっと抱き寄せられた。
(お兄ちゃんはヴィヴィのこと、我を忘れて抱きたくなる位には、思ってくれてる……。それだけで、今は、充分……)
しばらくして抱擁を解かれたヴィヴィは、匠海が剥いてくれたウェルカムフルーツを、手ずから食べさせてもらった。
「美味しいか?」
「とってもおいしいよ。お兄ちゃんも、はい。あ~ん」
ヴィヴィはそう言って、お皿の上のブドウを一粒摘まむと、匠海の形のいい唇に押し付ける。
「はいはい」
そう言いながらも笑って食べてくれた匠海に、ヴィヴィはほっと胸を撫で下ろした。
抱かれ続けてエネルギーが足りていないだけだったのか、フルーツを食べたヴィヴィは、結構元気になっている自分に気付く。
(良かった……エキシビ、滑れそう……)