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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第64章
「ヴィヴィは本当に、心配になるほど、俺しか見てなくて。なんでもマネしたがって、すぐに抱っこされたがって」
「ご、ご迷惑を……」
生まれた時から『お兄ちゃん子』だったらしいヴィヴィは、今までどれだけ匠海の手を煩わせたのだろうと、心配になり一応謝っておく。
そんなヴィヴィに苦笑した匠海が続ける。
「嬉しかったよ。ずっと兄弟が欲しいと思っていたし。お前達が俺の話を、その大きな瞳で興味津々に聞いているのが、可愛くてしょうがなかった」
「ふ~ん」
ヴィヴィは昔を心底嬉しそうに語る匠海に、静かに相槌を打ち、耳を傾ける。
「お前は覚えてないかもしれないけれど、ヴィクトリアは何回か連れ去られそうになったことあるんだぞ?」
「え?」
「こんなに綺麗な金髪で白い肌に愛くるしい顔で、俺の目以外にもお前は天使のように映ってたんだろうな。良からぬ輩に手を引かれたことがある。もちろん俺や朝比奈がすぐに気付いて、大事には至らなかったけれど」
「ぜ、全然覚えてないよ……」
まったく記憶にないその事実に、ヴィヴィは少し驚いた。
「ま、そんなこと覚えてなくていいけど。それだけ可愛かったってことだ」
「……過去形……?」
そう言って唇を尖らせたヴィヴィに、
「馬鹿。今も可愛い」
と匠海は返し、その唇にちゅっとキスを落とした。
「………………っ」
(そ、そんなに簡単に『可愛い』とか言って……っ ヴィヴィ、本気にしちゃうよ? で、お兄ちゃんに少しでも好きになって貰えてるって、自惚れちゃうんだからっ)
絶句してしまったヴィヴィの顎は、匠海に指で掴んで上を向かされる。
「ヴィクトリア……。お前、なんで俺に『可愛い』って言われると、複雑な顔をする?」
「してないよ……」
ヴィヴィはそう言うと、匠海から視線を逸らす。
(気づかれてたんだ……)
顎から指を離した匠海は、何故かヴィヴィの両手首を握って妹の顔を覗き込んでくる。
「ふうん……。ま、そんなヴィクトリアも可愛いけどな」
「な……っ!?」
変な声を上げてしまったヴィヴィの頬に、匠海がちゅっちゅっとキスをしてくる。
「照れてるのか? 本当に可愛いな」
「や、やめてってばっ」
明らかに面白がり始めている匠海に、ヴィヴィは勘弁してくれと心の中で思う。