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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第65章
12月初旬のグランプリファイナルを終え、ドイツ・ミュンヘンから帰国した双子は、12月21日から始まる全日本選手権へと向けて練習に励んでいた。
そしてそれと並行して、『教育兄』の指導の下での勉強も、どうしても続けたい楽器の練習も、バレエの練習も、何とか時間をやり繰りして両立させていた。
そんなヴィヴィはBSTのカフェテリアで、まだ開けていないランチボックスを枕に、テーブルに突っ伏していた。
「ヴィヴィ……風邪ひくよ……?」
その声と共に、肩に掛けられたのは、学園指定の紺色のカーディガン。
ヴィヴィはむくりと頭だけを起こすと、声の主であるクリスに「Thanks」とお礼を言い、また突っ伏した。
「どうしちゃったの、これ?」
遅れてカフェテリアにやって来たクラスメイトのジェシカが、ヴィヴィを指さしながら、隣に座っているカレンに尋ねる。
「保護者面談の後から、ずっとこうなの……」
カレンのその返しに、
「あ゛~……」
と変な声を上げて苦虫を噛み潰した様な表情を見せたのは、マイク。
「ど、どうしたの、マイクまで?」
「あ~……、保護者面談で、志望大学について言われてな……」
ジェシカの問いに、マイクが意気消沈して呟く。
「高望みしすぎだって?」
アレックスの突っ込みに、マイクが「うるせえっ!」と噛み付く。
「で、そこの生ける屍は、何て言われたの?」
ケイトがそう尋ねながら、フォークの柄でヴィヴィの頭をつんつんと突く。
(生ける屍……言いえて妙だな……)
ヴィヴィはそんなことを思いながら、ゆっくりと上半身を起こし、大きな溜め息を付く。
「……第二・第三志望も、出しなさいって……」
ヴィヴィのその返答に、
「それ、遠回しに『東大一本は無謀すぎ!』って言われてるよね?」とケイト。
「遠回しじゃなく、直接的に言ってるよな?」とアレックス。
二人の意見に「そうだよねぇ……」とヴィヴィはがっくりと項垂れる。
しかし『教育兄』の意見は違った。
「そんなもの、必要ない……」
クリスのその強気な言葉に、そのテーブルにいた皆が「「「おぉ~~っ!?」」」とおののく。
「ヴィヴィは、僕と一緒で『東大一本』でいい……」
『教育兄』はそう言い切ると、もぐもぐと好物の竜田揚げを頬張る。