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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第65章        

「えぇ……」

 ヴィヴィは眉をハの字にして情けない声を上げるが、

「次のヴィヴィの、保護者面談、僕も参加する……」

とクリスに言われれば、

「はぁ……」

と納得するしかない。なんと言ってもこの『教育兄』が、一番ヴィヴィの勉強の進捗度合いを分かっているのだ。

 保護者面談に来てくれた母ジュリアンはと言えば、担任からの意見に、

『へ~、そうなんですか?』

『ふ~ん。そうなんだって、ヴィヴィ』

『なるほど……。まあ、適度に頑張りなさいよ』

とあまりにも適当すぎる相槌を打って、帰って行ったのだ。

 ジュリアンは保護者としては、あまりにも放任主義で役に立たなさすぎた。

(まあ、信頼してくれているから、放任主義でいられるんだろうけどね……)

 そこは理解しているヴィヴィは、別にこれ以上両親に何も望んでいないので、それはそれでいいのだった。

「で、クリスは何か言われたのか? 保護者面談で」

 アレックスがクリスのランチボックスからタコさんウィンナーを取り上げ、ぱくりと口に放り込みながら聞いてくる。

「『このまま行けば、いいんじゃない?』って……」

 クリスのその返事に、皆が一様に「「「へ、へえ~……」」」とドン引きする。

(きっと今までBSTには『東大合格間違いナシ!』と予備校講師陣から太鼓判を押された生徒が、存在しなかったから、先生達も何とも言えないんだろうな……)

 ヴィヴィはそう思いながら、自分のランチボックスを開く。

(そして、ヴィヴィは『東大合格間違いナシ!』ではないから、先生に『第二・第三志望も、出しなさい』って言われたんだ……とほほ……)

 そう肩を落としながらフォークを親指に挟んで、『いただきます』と両手を合わせていると、隣のクリスにタコさんウィンナーを盗まれた。

(とほほ……)

 ヴィヴィは隣のマイクのランチボックスをちらりと見たが、カニさんウィンナーなので盗むのは止めておいた。

「はぁ……これから受験・受験なんだろうな~」

「そだねぇ~……」

「なんか楽しいこと、ないかな~?」

 もう高校2年の12月なので、進学組も就職組も色々思うところがあるようだ。

「ねえ、高校卒業したら、何したい?」

 カレンのその素晴らしい質問は、淀んでいた場の空気を一変させた。

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