この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第65章
「宮根さん。そんなお二人に、視聴者の方々からTwitterで、メッセージと質問が本当に沢山寄せられています。いくつか紹介させて下さい。まず、朝比奈さんから、『ヴィヴィちゃんのSP、いつも激しくて素敵ですが、どういうことを思いながら滑っているのですか?』とのご質問ですが、ヴィクトリア選手、いかがですか?」
女子アナのその質問に、ヴィヴィは苦笑いを浮かべながら答える。
「ええと、SPの後半に入るところで、ジャッジに向けて咆哮する振付があるんですが、その時は『がお~~っ!!』って頭の中で叫んでます。後は、もう振付とかエレメンツのことしか考えてないです」
ヴィヴィのその答えに、宮根が笑う。
「そんな事思って滑ってはるの?」
「はい、叫んでる時の気分は、ライオンって感じです」
素直にそう答えたヴィヴィに、スタジオ内が笑いが起きる。
「じゃあ、次のご質問に移ります。マツさんから『クリス君のFPの牧神の午後は、今までと違ってセクシーな感じですが、好きな女の子でも出来たのですか?』とのかなり突っ込んだご質問です。クリス選手、どうですか?」
女子アナの読み上げた質問に、クリスは何故か隣のヴィヴィにちらりと視線を寄越し、前に向き直った。
「ヴィヴィ以上に素敵な子が、まだ現れてくれないので、答えはNOです」
そう何でもない事のように言い切ったクリスに、隣のヴィヴィは大きな瞳を限界まで見開いた。
(はあ……っ!?)
呆然とクリスを見つめるヴィヴィに、ちらりと妹の顔を見たクリスが小さく頷いて、また正面になおる。
「ほんま、妹ちゃん、大好きやねっ! これはヴィヴィちゃん、彼氏作るん大変やでっ!?」
宮根が腹を抱えて笑う中、ヴィヴィは、
「……あはっ、あはははは……」
と乾いた笑いを零して、とにかく笑ってその場を誤魔化すしかなかった。
翌日の12月25日。
篠宮邸は例年通りクリスマス仕様に豪奢に飾り付けがなされ、広い庭園にもイルミネーションが灯っている。
家族は大きなモミの木が据えられたリビングスペースに集い、暖炉が燈るその暖かな空間で思い思いに寛いでいた。
ヴィヴィはもうウキウキわくわくドキドキ、しっぱなしで夜が訪れるのを待っていた。