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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第65章        

「ね~、まだ~……?」

 そう拗ねた声を上げて、ヴィヴィが後ろに控えている朝比奈を見上げるが、

「後、もう少しですかね?」

と困ったように笑われる。

「今年はクリスマスに試合が被らなくて、本当に良かったわ~。こんなこと、滅多にないものね」

 隣に座ったジュリアンが、とても嬉しそうに微笑みながら、シャンパンを飲んでいる。

「もう飲んでるのっ!?」

 ヴィヴィがそう咎めるように言えば、

「いいじゃない! もう19時なんだからっ! ね、グレコリ~?」

「ね~、ジュリアン~?」

と両親はもう既に酔っ払い始めていた。

「酒は飲んでも、飲まれるな……」

 クリスがそうぼそりと格言を呟けば、隣に座った父が、

「可愛くない事言って! クリスにも飲ませてやる~っ」

とシャンパングラスを片手に、クリスの首を抱き寄せ、その薄い唇にグラスを押し付けている。

「ダッドっ!? 親が子供に酒勧めるなんて、意味わかんないからっ!!」

 ヴィヴィがソファーから立ち上がって父の暴挙を止めようとした時、篠宮邸の車寄せに車が入ってくる微かな音がした。

「あっ! やっと着いたわね?」

 ジュリアンが颯爽と玄関ホールへと向かう姿に、ヴィヴィの心臓がどくりと高鳴る。

 そして自分の纏っている薄紅色のワンピースに視線を落とし、やっぱり子供っぽくないかな? と今更焦っていると、

「途轍もなく、可愛くて、似合ってるよ……?」

と傍に寄ってきたクリスに褒められ、ハーフアップにした金髪にキスを落とされる。

「あ、ありがとう。クリスも格好いいよ?」

 はにかんでお礼を言ったヴィヴィを、紺色のジャケットと千鳥格子のパンツを纏ったクリスが、手を引いて玄関へと連れて行く。

 玄関ホールの大きな扉は既に開け放たれ、両親の後ろには屋敷の使用人一同が勢揃いしていた。

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