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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第65章
「双子は世界選手権、出場決まったんだって?」
匠海がそう言って、目の前のクリスとヴィヴィを見比べる。
「うん。これで、英国の親族に、顔向けできる……」
クリスがそう冗談めかして答えれば、ヴィヴィは必死な顔で匠海を見つめ、
「バ、バーミンガム、なんだけど……っ お、お兄ちゃん――」
「ああ、勿論行くよ。当たり前だろう?」
匠海はそう言って満面の笑みで双子を見返す。
「――っ やった~~っ!!」
ヴィヴィはそう叫ぶと、もろ手を挙げて喜ぶ。
右肩に大きなリボンの付いた、清楚なワンピースを纏ったヴィヴィが万歳する姿に、朝比奈が、
「お嬢様……はしたないですよ……」
と脱力して呟く。
その呟きに我に返ったヴィヴィは、両手を下すと、何事も無かったようにナイフとフォークでアンティパストをつつく。
「ふ……っ いつまで経っても『お子ちゃま』だな、ヴィヴィは」
匠海のその意地悪な突っ込みにも、ヴィヴィは小さく舌をべっと出して見せるだけで、すぐに機嫌が直る。
(やった~っ!! でももし、お兄ちゃんに『世界フィギュアは観戦に行けない』って言われても、ヴィヴィもう試合後に、オックスフォードまで押し掛けるつもりだったけどねっ!!)
鼻歌でも歌いそうな勢いで、食事を平らげていくヴィヴィだったが、1時間後――。
「ほら~、匠海~ぃ、もっと呑みなさいよぉ~」
「そうだぞ! 今日はクリスマスでもあるし、お前の帰国祝いでもあり、めでた過ぎる日なんだからなっ!」
「の、飲んでるけど……」
「ほら、せっかく美味しいシャンパン取り寄せたんだから! ぐいぐいいっちゃいなさいっ!」
「匠海、俺の酒が呑めんのかっ!?」
「だから、飲んでるって……」
双子の目の前では、カオスな光景が繰り広げられていた。
「な、なんだろう、これ……」
ヴィヴィが呆気に取られて呟くと、
「とにかく、兄さんが帰ってきて、嬉しいんだね……」
クリスも呆れた様子で呟く。