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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第12章
少しだけ淋しい気もしたが、それを上回る達成感があるので、ヴィヴィは「まあいいか」と思いながらバスルームへと消えていった。
途中うとうとしながらなんとかお風呂を上がったヴィヴィは喉の渇きをおぼえ、ペタペタとスリッパの音を立ててリビングへと戻る。
備え付けの小さな冷蔵庫から、ガス入りのミネラルウォーターのペットボトルを取り出したヴィヴィは、振り向いた途端、掌からペットボトルを取り落した。
「お……っ お兄ちゃんっ!? いつの間に?」
ヴィヴィはあまりに驚愕して一瞬叫びそうになったが、何とか堪えた。
目の前の白いソファーには、匠海がリラックスした様子で腰かけていた。
(あれ、こういう展開、前にもあったような?)
そう思いながら匠海を見ると、匠海はにっこりと笑う。
「20分前から。ヴィヴィ長風呂だな。またお風呂で寝ちゃって風邪ひくんじゃないかと思って、あと10分待っても出てこなかったら、声かけようと思ってたんだ」
「…………っ」
今のヴィヴィが入浴中に匠海に声をかけられたりしたら、焦ってバスタブに溺れそうになっていただろう。
「お、同じ失敗は、く、繰り返さないもん」
バスタブにつかりながらうとうとしていたくせに、ヴィヴィは頬を膨らませてみせた。
そして心の隅では、そんな自分に少しホッとする――前より少しは自然に兄に接せられうようになったと。
L字型のソファーに匠海に変に思われない程度に、少し離れて座る。
その時になって初めて自分の無防備な姿に気づいた。
12月とはいえ部屋の中は暖炉が焚かれているし、空調設備も整っているので寒くない。
なのでヴィヴィは、オフホワイトのバスローブ一枚だった。
もう一度言おう。
バスローブ一枚だけだった――下着類は一切付けていないのだ。
(寝室で着替えればいいと、思ってたのに……)
膝丈までのバスローブの裾を庇う様に両掌を置いたヴィヴィだったが、そんなことになっていようとはつゆ知らず、匠海はヴィヴィの顔を覗き込む。
「Merry X’mas!! ヴィヴィ」
「え?」
いきなりの匠海の言葉に、ヴィヴィは首を傾げる。
「後5分で終わるけれど、一応まだX’masだよ」
そう言って指をさした匠海の視線の先には、23時55分を指し示した置時計があった。