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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第66章
「ヴィヴィのお兄さん、男の俺から見ても、超イケメンだったわ!」
アルフレッドが驚いた表情で、ヴィヴィを見下ろしてくる。
「あはは! 伝えておく~。じゃあ、お兄ちゃんのところ行ってくるね。マリア、ありがとう!」
ヴィヴィはそう言って二人と別れると、関係者ONLYのカフェスペースや関係者席を覗きに行く。
するともう開場が始まり、観客が入り始めたアリーナの関係者席に、匠海と父グレコリーを見つけた。
「ダッド! お兄ちゃん! 来てくれてありがとう~」
エキシビション『不思議の国のアリス』の衣装を身に纏ったヴィヴィが、そう嬉しそうな声を上げて二人に近づくと、こちらを振り返った父が、その娘の姿を見て目を見開いた。
「おおっ! めちゃくちゃ可愛いな~っ!! さあ、こっちに来て、ダッドによく見せておくれ~っ」
そう娘にデレデレな父になってしまっているダッドに、
「え……。ダッド、何度かヴィヴィのエキシビ録画、見てるでしょう……?」
とヴィヴィは少し引き気味で突っ込む。
「生で見るのは初めてだろうが~っ!! いやあ、もうアリスそのものだな! っていうか、この愛らしさは、アリスを超えたなっ!!」
娘の両肩を掴んでそうべた褒めしまくる父に、「そ、それはどうも……」とヴィヴィは言うしかなかった。
「な、匠海?」
急に隣の匠海に話を振った父に、振られた本人は苦笑する。
「ん~……。まあまあかな」
そうつれない返事を寄越した匠海に、ヴィヴィは「え~~……」と不服そうな声を発し、ピンク色に塗った唇を尖らせる。
「なんだよ? べた褒めされるのも、まあまあって言われるのも不服なのか? この我が儘娘め」
そう言って黒色のカチューシャを乗せた金色の頭を撫でてくる匠海に、ヴィヴィは頬を赤らめ、
「普通に褒めてくれれば、いいんです……」
と小さく呟いた。
「お、クリスも来たな。おお~、マイケルジャクソンといえば、ホワイトソックスだよなっ!」
ダッドが続いて現れたクリスへと視線を向け、そちらへ近寄っていく。
その場に匠海と取り残されたヴィヴィの耳元に、兄はそっと唇を寄せて囁いた。
「恐ろしく可愛らしいよ」
その兄の褒め言葉に、ヴィヴィは咄嗟に背の高い匠海を見上げると、そこにはにやりと嗤った兄がいた。