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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第66章         



 12月27日。

 メダリスト・オン・アイスの翌日。

 朝から東京本社へと出かけたらしい匠海は、一日中屋敷にいなかった。

 BSTが冬休みに入っているため、午前中いっぱいを練習に費やした双子は、昼食後は今年最後のバレエのレッスンを受けに行き、帰ってきてからずっと勉強していた。

 iPadで予備校の授業を3倍速で受け、問題集を解き、極めつけには本当に理解出来ているか、クリスに口頭で説明しなければならない。

「駄目。理解不足……。もう一回、別の応用問題、解いて……」

 クリスの容赦ないその言葉に、ヴィヴィはぐっと詰まるが「はい……」と素直に従い、問題集を開く。

 その一連の流れを2回繰り返してヴィヴィがぐったりした頃、朝比奈がディナーの時間だと呼びに来てくれ、双子はクリスの書斎から1階のダイニングへ降りて行った。

「あら……ヴィヴィ、疲れた顔して」

「マムぅ~……」

 母ジュリアンのその第一声に、ヴィヴィが助けを求め、情けない声を上げる。

「2年の冬休みは、大事な季節なんだよ? センターまで、あと1年しかないんだからね?」

 『教育兄』がそうすらすらと正論を並べ立てる前で、ジュリアンがにっこり微笑み、

「なんだって~、ヴィヴィ?」

と華麗に保護者の責任を放棄した。

「………………」

(もう、貴女には何も期待してませんよ……。ええ)

「ダッドと兄さんは……? 本社……?」

 クリスがディナーの席にいない二人の所在を、ジュリアンに確認する。

「ええ。英国支社で見つけた問題点を、重役会議で話し合ってるらしいわ」

「ふうん……面白そう……」

「あ……。クリスは、会社経営、興味あるもんね?」

 ヴィヴィは以前聞いたクリスの将来の夢を思い出し、隣のクリスを覗き込む。

「うん……」

「じゃあ、大学進学したら、本社で勉強させてもらえば? さすがにスケートで忙しいから、大学時代の匠海と同じようにはいかないだろうけれど」

 母のその提案に、クリスは少し首を捻る。

「そうだね……。兄さんが、嫌でなければ……」

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