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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第66章         

(ああ、もう……。ヴィヴィ、睡眠時間1時間でいいや……。お兄ちゃんと一緒にいられるなら!)

 私室のリビングの電気を消したヴィヴィを、匠海が自分の寝室へと導いて、扉の鍵をかける。

「お仕事、お疲れ様!」

 そう言って匠海のスーツの胸に飛び込んだヴィヴィを、匠海はひょいと抱きかかえて寝室の奥へと入っていく。

 てっきりベッドに下されるのだろうと思っていたヴィヴィだったが、何故かウォーキングクローゼットの前で下された。

(あれ……?)

 不思議そうに見上げてくるヴィヴィに、匠海がクローゼットの扉を開いて妹をその中に押し込む。

「そこに置いてあるの着るまで、ここから出してやらない」

「……は……?」

 ヴィヴィは咄嗟には何のことやら分からず、あんぐりと口を開いて匠海を見上げるが、何故か目と鼻の先で扉を閉められてしまった。

「な、何事……?」

 匠海の突然の行動に、ヴィヴィは首を捻るが、とりあえず何が置いてあるのか確かめようとクローゼットの奥へと入っていく。

 自分のそれよりも広めのそこは、一番奥にオットマンが置かれており、その上に掛けられていたのは、

「――っ うぇええええっ!?」

 ヴィヴィが絶叫を上げて、そこに掛けられている洋服――自分のエキシビの衣装を見つめた。

『不思議の国のアリス』

 幼い少女アリスが、人語を喋る白ウサギを追いかけて不思議の国に迷い込み、言語を操る不思議な動物や動くトランプ等、様々なキャラクター達と出会いながら、不思議な世界を冒険するさまを描いた、長年に渡り愛されている文学作品。

「………………」

 ヴィヴィはぶんぶんと金色の頭を振る。

(――って、いやいや、そうじゃなくて……。てか、なんで? なんで、これ着るの? 今からえ、えっちなこと……するのに?)

「……は……っ!? も、もしかして、これが世にいう、コスプレ……っ!?」

 ヴィヴィの顔からざっと血の気が引いていく。

(お、お兄ちゃん……こういう趣味があったんだ……。こ、コスプレ……かぁ……)

 目の前のオットマンに両手を付き、ヴィヴィはその場にへなへなとしゃがみ込む。

(でも、これ、一応……、ヴィヴィの戦闘服なんですけど……)

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