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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第66章
ヴィヴィが困ったように衣装を見上げる。
(膝丈でも3回転ジャンプが飛べるように、何回も長さや生地の量、調整して……。
ペチコートのレースも、よくエッジに引っかけちゃうから、
デザイナーさんが何度も手直ししてくれて……。
生地だって、サポート性にも伸縮性にも優れた、最新の生地を使っていて……)
しかし、それはスケーターであるヴィヴィには常識のことだが、そうでない匠海には、ただのコスプレ衣装にしか見えなくても仕方がない。
「………………」
ヴィヴィの薄い唇から嘆息が零れる。
(でも、それでお兄ちゃんが、喜んでくれるなら……。みんな、一回だけだから、ごめんなさい……)
心の中で手を合わせてそう関係者に謝ると、ヴィヴィは立ち上がり、バスローブを脱ぎ捨てて、水色のワンピースと白いエプロンドレスのそれに袖を通した。
そして、いつもなら履く、競技用の分厚いストッキングがないのでこのままでいいのかな、と思ったヴィヴィの視線の先、3足のニーハイソックスが目に入った。
白、黒、白と黒の縞々。
そしてその横にはご丁寧に、黒いリボンカチューシャまで置かれていた。
「……え゛ぇ~……」
(こ、これ……。どうやって手に入れたんだろう……)
ヴィヴィは脱力しながらも、縞々のそれを手に取り、オットマンに腰を下ろして身に着けていく。
大きな姿見の前でカチューシャを付け、全身を確認したヴィヴィは、重い足取りでクローゼットから出た。
「ああ、着替えたか? こちらへ来なさい」
「………………」
ヴィヴィは匠海が言うとおり、兄の腰かけているベッドへと近づいていく。
目の前に立ったヴィヴィの姿をしげしげと見つめた匠海が、満足そうに頷く。
「ああ、金色の長い髪に、白い肌……。少し小生意気そうなその表情……。まさにリアルアリスだ、よく似合っている」
「それは……どうも……」
褒められているんだか、馬鹿にされているんだか判断が付かず、ヴィヴィは微妙な表情を浮かべた。
そんなヴィヴィの胸下まである長い金髪に、匠海が手を伸ばして触れてくる。
「ああ、可愛いよ、ヴィクトリア……」
そう言う匠海のほうが、びしっと決まったスーツ姿で、いつも以上に素敵なのだが。